1704年、猫の世界でとびきりの物理学者、にゃートンが重力を発見した年だ。
猫界の物理学者たちの間でも、この名前を持つ者は何かしらの大発見をすることが求められていたのだ。
にゃートン自身は気難しい性格で、他の猫たちが昼間にひなたぼっこやネズミ捕りに興じている時でも、彼は小さな研究所で丸くなって本を読むのが日課だった。
そんな彼の口癖は「にゃんだこの世の法則は?」で、どんなことにもすぐに疑問を持つ。
そしてその日も彼は、好物のキャットミルクを飲みながら、世の中の不思議に思いを巡らせていた。
しかし、にゃートンは体が大きく、どうしてもお腹がぽっこりとしてしまう。
日差しが暖かくて少し眠くなってきた彼は、おもむろに木陰で昼寝をしようとした。ちょうどその時、古いリンゴの木の下で丸くなったにゃートンの頭に、ぽとりとリンゴが落ちてきたのだ。
「にゃ!?」
頭を押さえて飛び起きたにゃートンは、しばらくぼんやりとリンゴを見つめていた。
そして、何かがピンときた顔をして「にゃにゃにゃ、そうか、これだ!」と叫んだのである。
そう、猫の世界でも伝説となったこの瞬間、にゃートンは重力というものを発見したのだ。
「このリンゴ、ただ落ちたんじゃないにゃ。引っ張られて落ちたに違いないにゃ!」と、彼は木の下でくるくると踊り出した。
「地球にゃんかが、リンゴを引き寄せたにゃ!だからリンゴは落ちたんだにゃ!」
彼の研究室はリンゴだらけになり、彼のノートは「重力の法則」と書かれた図や数式でびっしり埋まっていた。
にゃートンの研究は、もちろん猫界でも注目を集め、街中の猫たちは彼の発見に興奮した。
特に、ネズミを追いかけるスピードを理論的に説明できることが、ハンター猫たちの間で大ブームになった。
ただし、にゃートンが重力の法則を説明するために、リンゴを頭に乗せて実演しようとした時は、ちょっとしたハプニングが起こった。
彼の助手を務める子猫、にゃんパードが、にゃートンの真似をして頭にリンゴを乗せた瞬間、足を滑らせてそのまま転がり落ちてしまったのだ。
「にゃんパード、それはただの事故だにゃ!」
そんなやりとりが続きながらも、にゃートンは研究を進めた。
やがて、重力の影響で物がどう動くかという「にゃートンの法則」を完成させた。その時、彼は自信たっぷりに「これで世界中の猫たちは、もっと賢くなるにゃ!」と胸を張った。
そして、にゃートンの発見が世に出た後のこと、彼の名は猫界だけでなく、なんと人間の世界にも響き渡ることとなる。
実は、にゃートンがリンゴを使って研究をしていたことを、偶然近くに住んでいた人間の学者が目撃していたのである。
その学者は後に「ニュートン」として名を残し、にゃートンの発見を「自分のもの」として発表したのだった。
しかし、にゃートンはそんなことを全く気にしなかった。むしろ「にゃんだ、誰でも同じ結論にたどり着くにゃ」と気楽に笑っていたという。結局、彼にとって重要だったのは、世界の法則を自分の目で確かめることだったのだ。
その後、にゃートンは長い猫生を重力の研究に捧げ、猫界の科学の発展に大きく貢献した。しかし、彼が本当に一番誇りに思っていたのは、自分の発見がネズミ捕りの技術を格段に向上させたことだった。
「重力があるおかげで、ネズミも落ちてくるにゃ。感謝するにゃん」と、彼はしばしば微笑みながらそう語っていた。
そして、にゃートンが生涯を終える時、彼は最後の力を振り絞って「重力の研究はにゃんとも楽しいものだったにゃ」と言い残し、ふわりと眠りについたという。