わかってはいるつもりだけど納得できない。
45歳既婚。二児の父。
ただ、この年でも髪の毛はふさふさだし、筋トレも欠かさないので10歳くらいは普通に若く見られる。
もてたいわけじゃないけど、いつも小綺麗にしておくくらいは気をつけている。
まぁだからいつ人に好きになられても仕方ないかなくらいには思っている。
週に2日以上は、家を15分早く出て駅までの道を遠回りして軽くウォーキングするようにしている。
中学生とは、その道の途中ですれ違った。
最初から意識していたわけなんてなく、この4月から見かけるようになったので新入生なのだろうくらいには思っていた。
むしろ事案になんてなりたくないと思っているので、女子中学生を視界の端で捉えるとそちらにはあえて見向きもせず、進行方向の1点だけを見つめて歩くようにしていた。
たまに視界に入ることくらいはあったが、鏡を片手に一心に前髪をあれこれいじっていて、年頃だなぁと微笑ましく思っている程度だった。
あれ?と思ったのは半月前くらいで、きっかけは女子中学生の不自然な横断だった。
すれ違う場所は住宅街の片側一車線のバス通りで、自分は向かってその左側を歩き、女子中学生は右側を歩いていた。
ところが半月前のある日、交差点で信号待ちをしているとなぜか女子中学生が道のこちら側に渡ってきた。
横断するときに真横ですれ違う距離になるのだが、意識しないように遠くの1点だけを見つめて歩き続けた。
すれ違う時、どうにもしっかりとこちらを覗き込んでいるような気がした。
数日後、その交差点を過ぎたあたりで向こうから女子中学生が歩いてくるのが見えた。
すると突然、女子中学生は後方を確認して道の途中でこちら側にわたってきた。
おいおい何してんだこの子はと思いつつ、再び遠くの1点だけを見て歩いた。
たまに時間がずれるとすれ違わなかったが、それからというもの、その女子中学生は事あるごとにこちらにわたってきて、こちらが一向に興味を示さないでいるとしっかりと顔を覗き込まれているような気がした。
もしかしたら昨年中学校に進学した息子の後輩で、何処かであったことがあるかを確認しているのかもしれない。
いや、マスクをしているから有名人の誰かと勘違いでもしているのだろうか。
やっと花粉が落ち着いてきて、一週間ほど前のとある日からマスクをせずに家を出るようにした。
先述の人間違いのことも考えてなかったわけではない。
そうしてその日は、交差点の手前で女子中学生の存在に気がついた。
信号待ちをしていると先日と同様に女子中学生はこちら側にわたってきた。
やはりすれ違うときに強い視線を感じた。いつもよりこちらを見ている時間が長かったかもしれない。
そう思いながら駅までの道を急いだ。
それ以来、女子中学生は姿を見せなくなった。
まじか。
それはどっちだ。
人間違いだったのか、それともマスクの下ががっかりだったのか。
なんだかよくわからないが、女子中学生から自分に対する興味が消え失せたことだけはわかった。
別に最初から何かを期待していたわけなんてないのだが、なんだろう、この何にもしていないのに土足で心の中を踏みにじられた気分。
何かが始まるわけがなかったのに、急に何かが終わってしまった。
何かを期待してたわけじゃないのは本当で、それでも女子中学生に好かれてるかもしれないっていう妄想は正直悪いものではなかった。
フックがどうこう書いてた自称コンサル体臭増田みたいな釣り臭を感じる。