最初にハッキリ言っておくと「何も考えていないんじゃないか」と疑っている。
駄目だ。
もう言いたいことを全部言い終わったと脳が認識した。
全ての根源を最初に書くべきではなかった。
最近の展開なんてまさにそうだ。
笑いと共にミリオンを救うと語るルミリオン、彼が自分の師にして嘗てのオールマイトの相棒であるサーナイトアイとの誓いを守るために選んだ行為が尻で笑いを取ることであったというオチに対してどういう感情を抱けばいいのかが分からなかった。
それは俺の感じていたミリオのキャラクターとはあまりにもかけ離れていた。
彼は、ミリオンを掲げるような熱さを一見したコメディタッチな佇まいとは裏腹に胸に秘めていると思っていた。
その切り札が、心持ちが、ヴィラン相手に笑いを取るようなものだというのは私のイメージからはかけ離れていた。
笑いをたたえながらヴィランを叩きのめして、助けた誰かの心を覆った恐怖の影を吹き飛ばすように横で笑顔を見せて安心させるようなキャラクターだと、彼の語る笑顔の世界はそうだと思っていた。
でも違ったんだ。
彼の最大の見せ場として用意されたであろうシーンは、売れない芸人が冷え切ったステージでヤケを起こして繰り出した低俗な下ネタそのものだ。
作中最大の宿敵はそれを見て吹き出し、そのすぐ横に我らが主人公が現れている。
どんな感情を持てば良いんだ……。
凄いシーンであることを表さんと大胆に使われた全4コマだけの6ページ、その中で行われるアメコミのようなコマ送り。
また一つハッキリ言わせてくれ、「形だけ真似ているような感じがしてかえって興が削がれる」と。
ああわかっているんだ。
この漫画の読み方の正解は。
わかっているんだ。
「ただ黙って作者の意図通りに流されてやれば良い」ってことだ。
でもその意図を探すのが難しいんだ。
この漫画は変に逆張りだったり読者に考えを委ねたりを繰り返すんだが、その実として作者に都合の良い解釈を必死に読者が探して打ち返してやる必要があるんだ。
酔っ払って意味不明の言葉を繰り返す友人の夢の話に「わかるよわかるよ」と気のない愛想笑いを返しながら自分もさっさと酔いつぶれてしまえば良いとばかりに酒を煽るようなそんな態度を取れと言わんばかりだ。
まあヒロアカだけをずっと読んでいるならいいんだろうが、ジャンプの漫画は他にもある。
呪術廻戦は若干熱めにそれでいてやや俯瞰的な頭で読みたいし、アオのハコは美しい敗北に自分も傷つくためにも感性を研ぎ澄またい、マッシュルや夜桜は気持ちを若く保ってペラペラと絵を楽しむように、そしてPPPPPPは概念の奔流をしっかり脳の奥に流し込みながら、ONE PIECEは求められるものがコロコロ変わりはするが王道は抑えているのでこれこそ本当に流されればいい。
そうやって色んな漫画に合わせて読み方を変えていく中で、ヒロアカはあまりにも特異すぎてこれに下手に合わせると他の漫画を読みにくくなってしまう。
なんなんだ。
これが好きだと言っている人達はどうやってこんな漫画を読んでいるんだ。
トップクラスヒーローがただの学生のために自分の命を決戦の場で安易に投げ捨てるような無責任な物語だぞ?
俺はどういう気持ちで読めばいい?