昔みてたアニメで、どう見てもセリフと映像のタイミングがおかしいものがあった。
タイトルは伏せるが、出演声優はメインから脇まで皆場数を踏んでおり、今も第一線で活躍する面々だ。確か主役のキャストを当時追ってて、片っ端から出演作を見ていたのだが、どうしてもその作品だけがおかしかった。
別に下手ではないのに何故だろう。それとも下手ではないと思うのは、自分の贔屓目だろうか。モヤモヤしていた気持ちは物語が進むにつれてなんとなく理解できた。映像が間に合っていなかった。ネタになるような作画崩壊ではなく、シンプルに動きが少なかった。記憶が朧げだが、時折ピクチャードラマか?と思うくらい、セリフ量に対して画面が静かだった。
あんまりにもひどかったからか、二期(もともと分割だった)から制作会社が変わった。変わってからは多分多少マシだったように思うけど、シナリオにもテコ入れが入ったのか、それまで空気扱いだったヒロインが急にプッシュされた。街のトラブルシューターが難事件を解決、というコンセプトはいつのまにか消えていた。
せっかく面白い題材だったのにと残念に思いながら、オンエア終了後、アニメ雑誌でキャストのインタビューを読んだ。
「アフレコ時は殆ど真っ白で、“もっとメガネっぽく!”とかなかなかトリッキーな指示がありましたね笑」との一文(正確には覚えていないが、ニュアンス的にこんな文章だった)を見てようやく合点がいった。なんとかギリギリ「アニメ」の体裁を保てていたのは、キャストの技量によるものだった。たぶん今放送されていたら、あの作品はボロクソに叩かれていただろう。
オンエア終了から五年以上が過ぎた。アニメの本数が増え、SNSや配信サイトが普及した。監督や脚本家、制作会社の評判が調べやすくなり、恵まれた作品と恵まれなかった作品の差がはっきりするようになり、声優の顔出し仕事が増えた。良くも悪くも作品名と主演声優の名前が結びつきやすくなった。
毎クール放送されるアニメ全てが良い出来とはいかないだろう。ご時世的なものもあるし、予算の都合もあるし、制作スタッフの演出が合う/合わないもある。ただ、ネットでクソアニメと評される作品を見るたびに思う。もしかしたら、好きだったあの作品みたいに、声優に皺寄せいってるのかもな、と。