2021.03.01
あくまでも企業の「努力義務」ですが、会社員は希望すれば70歳まで何かしらの形で働くことができるようになります。「70歳雇用」の概要を知っておきましょう。
少子高齢化が急速に進む中、働く意欲のある高年齢者が働ける環境を整備する目的で、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正され、2021年4月1日から施行されます。
厚生労働省のサイトにも「この改正は、定年の70歳への引き上げを義務付けるものではありません」と赤文字で強調されていますが、あくまでも70歳までの就業機会の確保を企業の“努力義務”としたものであり、70歳定年を義務化するものではありません。
■定年制度の何がどう変わるの?
では、定年制度の何がどう変わるのでしょう。施行後は、雇用者側の選択肢が増えることで、働く側にとっても選択肢がひろがる可能性があります。改正によるビフォー・アフターを見ていきましょう。
これまでの「高年齢者雇用安定法」では、定年年齢を65歳未満に設定している企業は、以下のいずれかを実施しなければなりませんでした。自社の制度を確認してみるといいでしょう。
③の継続雇用制度は、本人が希望すれば定年後も引き続き雇用してもらえる制度で、かつては労使協定で定めた基準により限定することが認められていましたが、現在は希望者全員が対象となります。継続雇用先は自社だけでなく、グループ会社も認められています。
2021年4月以降は、あくまでも努力義務ではあるものの、企業側では下記のように選択肢が広がります。雇用による措置は、65歳までだった年齢が70歳となり、定年制の廃止のほかは、70歳までの定年引き上げや、70歳までの継続雇用が並びます。
新たに増えたのは、雇用以外の措置です。定年後に起業したり、個人事業者となった者との間で継続的に業務委託契約を締結する、その企業や委託・出資している社会貢献事業でボランティア的な働き方をする、といった方法も加わります(ただし、雇用以外の措置は労働組合の過半数の同意等が必要)。
これらのメニューは企業側の選択肢で、しかも、あくまでも努力義務のため、企業によっては65歳雇用のままのところもあるかもしれません。実際には自社がどのような制度になっているのかについては、個々に確認するしかありません。
人生100年時代と言われる中、長くなる老後に備えるための1つとして、長く働いて、いわゆる「老後」の期間を短くするという方法があります。今回の70歳雇用は、企業の義務ではないものの、導入する企業が増えれば、私たちにとっても働き方の選択肢が広がります。
高齢期の働き方に関わるものとして、「在職老齢年金」という仕組みがあります。現在は、60~64歳は賃金と年金の合計額が月28万円を超えると年金が減額され、65歳以上は月47万円を超えると同じく年金が減額されるようになっています。この制度が、年金制度改革により、2022年4月からは60~64歳も減額されるラインが月47万円に引き上げられます。
年金繰下げも「70歳まで」だったものが「75歳まで」可能になります。75歳に繰下げると、年金額は65歳時点の基準額の1.84倍となります。この改正も2022年4月からです。
これらの制度の変化を見ても、今後は何らかの形で70歳前後まで働くことが推奨されることになりそうです。老後資金の準備をしっかり行うとともに、「老後」を短くすることで資産寿命を延ばしていく努力が必要になっています。