2019-10-11

[] #79-4「高望みんピック

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「年齢は近いほうがいいですかね。あ、あと異性で」

「他にはありませんか?」

自分が働いているので専業で家事ができる人……いや、家事代行を頼める資金があるなら、共稼ぎでもいいのか」

結局、タケモトさんは建前の、あってないような条件を挙げることしかできなかった。

“選ばれる側でもあるが、選ぶ側でもある”

コンサルタントがそう言った意味を表面上では分かっていたが、内包するものまでは理解できなかった。

自身人格や経歴といったものが、他人から見て魅力的に映るかどうか。

そこに懐疑的な以上、まず相手が選んでくれるかが重要だという考えは変えられなかったんだ。

「どうやら、もう少し自覚を持っていただく必要がありますね」

…………

あなたのように漠然としたまま、我が相談所に足を運ぶ人は少なくありません。そういった人に勧めるのが、このパーティなんです」

後日、コンサルタントに紹介されたのは個人ではなく団体

結婚したい人間たちが一同に介する、俗に言う「お見合いパーティ」の会場だった。

コンサルタントとしての経験から言わせてもらえば、あなたが今回で“運命出会い”を果たせるとは思っていません」

「じゃあ、どうしてここに案内したので?」

「ご自身結婚願望と真剣に向き合っていただくためです」

コンサルタントは語る。

相手を選ぶことは、例えるなら物件を選ぶことだと。

婚活とは実際に物件を探している状態です。冷やかしたり、引越し予定もないのに理想物件を呟くのとはワケが違います

物件……ですか」

勿論この例えはもちろん不適切ですが、と断わった上で話を続ける。

あなた必要なのは、どういった物件があるかを見学してもらうことです。どこが譲れないか、どこなら妥協できるか、そうして初めて見えてくることもあるでしょう」

「見えてくるもの……」

コンサルタント言葉真意があることは何となく分かる。

しかし、それが具体的に何なのかを、この時のタケモトさんはまだ計り兼ねていた。

「お集まりの皆様、お時間となりましたので、本日の催しを始めさせていただきます

アナウンスが開始の合図を告げる。

会場全体の空気がピリつき、自身の体に緊張が纏わりつく。

「あ、あの、何かアドバイスはありませんか?」

「気を張り過ぎない、見栄を張り過ぎないことですかね……ああ、あとタバコはおやめになるか、せめて匂いに気をつけた方がチャンスは増えると思いますよ。服などに残った匂いだけでも気にする人はいるので」

前回、タバコを吸ってから相談所に赴いたことを遠回しに指摘してきた。

今このタイミングで言ってくるとは、このコンサルタントは中々いい性格をしているらしい。

「それでは参加者の皆さん、胸の番号札順に席に座ってください!」

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