計画性もなく男の家に押し掛けてって、大した職歴もなくダラダラするだけの同棲生活を送っていた知り合いの女が突然養ってくれていた男に放り出された。半年ぐらい前の話だ。
食品や日用雑貨を買うための毎月の生活費を使い込んだのが原因だと聞いている。
彼女は手に職もない、職歴もない、路頭に迷ってる。もう半年立つのに仕事が決まらない。毎日いろんなゲームを朝から晩までやっていて、たまに日雇いの短期派遣やバイトの面接に行く。月末に近づくと明日の食費がないと嘆いている。
いつかまたあの男が迎えに来てくれる、お金さえ作れば許してくれるなど、女から送られてくるラインの端々から謎の期待値の高さをバシバシ感じる。
僕はずっと相談に乗っている。ふたりが付き合って別れて親友が携帯番号を変えるまでの、一部始終を知っている。男が僕の親友だからだ。
いいように金銭を吸い取られていく親友を見兼ねて、別れたほうがいいと進言したのは僕だ。
親友は何度給料のうちの大部分を使い込まれても女がいつか改心すると信じていた。
だが僕には女が口にする次はもうしないという言葉の信憑性も感じなかったし、改心の兆しも、働いてキャリアを積もうとする意欲も感じなかった。
一度親友と別れた直後にその女から告白されて僕の家に押しかけられたが追い返している。女はそんな過去は無かったかのように無神経に相談といって僕のところに連絡をよこす。それも解せない。
会話が成り立たない。価値観が合わない、理解できないレベルで身勝手でキツイ。
「同棲していた期間中趣味のものを我慢して、物を買うのを最低限に抑えて、相手の望むように振る舞って、どうしても欲しかったアニメの初回限定Blu-rayも買えなくてキツかった、20代捧げたのに32で放り出された」
って言われても自業自得だ。仕事をその当時からしてたら欲しいものも買えたし旅行にも行けたはずだ。みんなそうやってたまのご褒美を糧に努力して生活をしている。
女の若さをさも価値のある物のように言う事が嫌いだ。努力するなら後に残るものにすればいい。外見的な若さや美しさはいつか失われていく。それだけを振り翳して親友から20代の時間と貯蓄を吸い取ったのはあなただ。
長いこと彼女とは知り合いではあるが、僕は僕のしょぼい義憤心と、親友を廃人のようにした女への憎悪を抱えている。だから、あえて教えてやることはしない。
僕の親友は女と別れてから、だんだん生気が戻ってきている。一緒に遊びに行って、財布を出すと必ずちょっと多く払う癖がなくなった。いいことだと思う。