2018-08-08

[] #60-1「タメになった気の経営ごっこ

俺の通っている学校は、特に公民カリキュラムに力を入れている、らしい。

その公民とやらは更に学部とか科目が分かれていて、選択制となっている。

だけど、そもそも公民」というもの漠然しか学生理解していないので、この選択に大して意味はない。

ちゃんと考えて選んでいるのは、一部の意識が高い奴らだけだ。

俺はというと意識が低いので、入っているのは……えーと……うんちゃら部の、メディアかんちゃら文化のなんちゃら項……

……とどのつまり正式名称が長すぎて覚えていない。

から、みんな「文化部」って言っている。

その程度の認識しかないものを選んだ理由簡単

授業内容が基本的に楽だからだ。

ドキュメント番組映画を観たり、漫画小説を読んだりして、それのテキトー感想を書けばいいだけ。

それで簡単合格点をくれる。

だが、半端に真面目な奴や、要領が悪い奴は苦戦するらしい。

そいつらに何度かコツを尋ねられたが、俺が言えることはいつも一つ。

「ああいものを通じて社会を分かった気になればいい」

正解のない事柄で正解するには、自分の正解を押し付けることだ。

もちろん「正解でしょ?」という顔をしながらな。

まあ、そんなわけでユルい選択科目なんだが、あくまで“基本的に楽”なんだ。

たまに面倒くさいことをやらされることがある。

しかも面倒くさいだけじゃないってのが、尚更ゲンナリするというか……。

ちょっと愚痴っぽくなるかもしれないが、今回はその時の話をしよう。


…………

文化部の授業は、視聴覚室で行われる。

他の教室より座り心地のいい椅子もあって快適な場所だ。

エアコン温度肥満の奴に合わせていることは少し不満だが。

その肥満代表格が、文化担任教師から余計にな。

「みんな、おはよう!」

そんな室内の冷え込みを中和するかのように、担任は暑苦しい挨拶を響き渡らせた。

「で、今日の授業だが、別のことをやりたいと思う」

続けて飛び出た不穏当な言葉に、室内が冷え込むのを感じた。

その冷え込みのせいなのか、クラスメートのカジマが震えながら担任に尋ねた。

「せ、先生。“別のこと”ってのは何スか?」

「『経営ごっこ』だ!」

まだ概要すらロクに分からない状態だったが、俺たちはこの時点で嫌な気配を感じ取っていた。

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