2018-08-10

[] #60-3「タメになった気の経営ごっこ

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個人がやったことは月並みだ。

「なあ、こっちで働いた場合は何ポイントくれるんだ?」

カジマ側とタイナイ側に、それぞれ報酬を尋ねた。

労働で稼ぐ場合、より金を出してくれる方が得なのは分かりきっている。

から俺みたいに、今まで様子見をしていた人間も同じようにしていた。

「えーと……20ポイント?」

「少ないな。タイナイの方は25ポイントだが」

労働者一人につき、作れる消費物の数は決まっている。

から経営で稼ぎたいならば、労働者は出来る限り欲しいと考えるだろう。

ここは少しでも高めに設定しようとするはず。

「それが嫌ならタイナイの方にいけばいいっしょ?」

にも関わらず、カジマは強気だった。

その理由は察しがつく。

初めにカジマが声かけした時点で、既に一定数の労働者は確保できていたからだ。

消費物を使ってしまった労働者は、もう途中で鞍替えすることができない。

タイナイ側の方が稼げても、カジマのもとで働くしかない。

当然、俺はタイナイのほうで稼ぐことにした。

こうして1ターン目は終了。

何となく予想していた通りの流れだし、俺以外の奴らも半分以上はそうだったろう。

だが、問題は次のターンからだ。


…………

2ターン目、この時点では、俺が暫定トップだ。

だが、別に有利という状況ではない。

タイナイのもとで労働選択した奴らと同率だからってのもあるが、俺たちはこのターンは金を増やせないからだ。

消費物がなくなったから、このターンは労働で稼げない。

消費物を持った労働者がほぼいないので、経営も無理。

実質的に、俺たちが出来るのは消費物を買うこと一択なんだ。

カジマとタイナイもそれは分かっているだろうから、ここは前のターンで得た消費物を売りに出す。

「は~い、ひとつ15ポイントで売るっすよ~」

「よし、こっちも売っていこう。1個15ポイントね」

タイナイは消費物の値段はカジマと同じにしたらしい。

カジマよりも労働者に払った分、高めにしないと1つあたりの儲けは少なくなる。

だが、同じ値段じゃないと俺たちは買わないから、この値段設定にせざるを得ない。

とはいえ消費物の数は上なので、その分たくさん売って儲けようという計算なのだろう。

「じゃあ、こっちは14ポイントで売るよ~」

「ちょっ……おい、カジマ!」

だが、タイナイの価格設定を聞いて、カジマは露骨に値下げをしてきた。

当然、労働者的には安い方がいいのでそっちに群がる。

その中には俺もいた。

ルール上、お一人様三点までっすよ~。はいはい、毎度あり~」

タイナイも値段を下げたいところだったが、そうもいかなかった。

これ以上、値段を下げても儲けはほとんど出ない。

仮に値下げをしても、またカジマはそれより下げてくるだろう。

そしてカジマの方が労働者を安く雇えた分、値下げ合戦で先に音を上げるのはタイナイなんだ。

結果、このターンはカジマが売り切り。

タイナイは多くの消費物と、少ない金を抱えたまま次のターンを迎えることになった。

そして、このゲームはここからどんどん雲行きが怪しくなってくる。

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