労働で稼ぐ場合、より金を出してくれる方が得なのは分かりきっている。
だから俺みたいに、今まで様子見をしていた人間も同じようにしていた。
労働者一人につき、作れる消費物の数は決まっている。
だから経営で稼ぎたいならば、労働者は出来る限り欲しいと考えるだろう。
ここは少しでも高めに設定しようとするはず。
「それが嫌ならタイナイの方にいけばいいっしょ?」
にも関わらず、カジマは強気だった。
その理由は察しがつく。
初めにカジマが声かけした時点で、既に一定数の労働者は確保できていたからだ。
消費物を使ってしまった労働者は、もう途中で鞍替えすることができない。
当然、俺はタイナイのほうで稼ぐことにした。
こうして1ターン目は終了。
何となく予想していた通りの流れだし、俺以外の奴らも半分以上はそうだったろう。
2ターン目、この時点では、俺が暫定トップだ。
だが、別に有利という状況ではない。
タイナイのもとで労働を選択した奴らと同率だからってのもあるが、俺たちはこのターンは金を増やせないからだ。
カジマとタイナイもそれは分かっているだろうから、ここは前のターンで得た消費物を売りに出す。
「よし、こっちも売っていこう。1個15ポイントね」
タイナイは消費物の値段はカジマと同じにしたらしい。
カジマよりも労働者に払った分、高めにしないと1つあたりの儲けは少なくなる。
だが、同じ値段じゃないと俺たちは買わないから、この値段設定にせざるを得ない。
とはいえ消費物の数は上なので、その分たくさん売って儲けようという計算なのだろう。
「じゃあ、こっちは14ポイントで売るよ~」
「ちょっ……おい、カジマ!」
だが、タイナイの価格設定を聞いて、カジマは露骨に値下げをしてきた。
当然、労働者的には安い方がいいのでそっちに群がる。
その中には俺もいた。
「ルール上、お一人様三点までっすよ~。はいはい、毎度あり~」
タイナイも値段を下げたいところだったが、そうもいかなかった。
これ以上、値段を下げても儲けはほとんど出ない。
仮に値下げをしても、またカジマはそれより下げてくるだろう。
そしてカジマの方が労働者を安く雇えた分、値下げ合戦で先に音を上げるのはタイナイなんだ。
結果、このターンはカジマが売り切り。
タイナイは多くの消費物と、少ない金を抱えたまま次のターンを迎えることになった。
そして、このゲームはここからどんどん雲行きが怪しくなってくる。
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