2018-07-25

彼氏友達キスをした。

20歳の時、私には彼氏がいた。

中学生の時から親友で、高校生の時に異性として意識し始めてそのまま付き合いだしたような関係。なんでも話せたし、やりたいことは一通りした。だからか、20歳のその頃、彼はわたし蔑ろにしていたと思う。少なくともわたしはそんな扱いを受けていると感じていた。遠距離でなかなか会えなくなっていたことも重なって、「私は彼のこと好きだけど、彼は私のこと本当に好きなのかな?」と心配だった。

お酒が飲めると待ち望んでいた20歳誕生日が来て、9月のある日の夜のことだった。ひょんなことで、彼氏友達である友達Aに一緒に飲まないかと誘われた。誘われた時にはAは、共通友達である女友達Bと飲んでおり既に軽く酔っていた。普段から束縛の強い彼氏に嫌気が差していたのもあった。束縛するくせに、私を適当に扱うことにも怒っていた。彼氏を少しだけ嫉妬させるつもりで、二つ返事でその飲み会へと向かった。

言われた居酒屋に行くと、そこには既にかなり酔っ払っていたAとBがいた。胃に何も入っていない私に、2人はお酒をすすめた。女友達Bとは中学からの仲だが、男友達Aとは複数回会ったことはあるものの、彼氏がいないところで会うのは初めてだった。なんとなく直感で、いつも向けられてる目と違うと感じた。しかし、「Bもいるから変なことはできないし、彼氏嫉妬させるにはちょうどいいかな」くらいにしか思っていなかった。自分お酒に強いと過信する若気の至りもあり、何も気にすることなく、私は一気にビール日本酒を飲んだ。

1時間も経てば、わたしは2人と同じくらいベロベロに酔っ払っていた。食べ物を食べなかったのもあり、酔いが回るのも普段より早かった。そして、女友達Bが「具合が悪い」とトイレに立った間に事件は起こった。男友達Aは私と机を挟んで向かい合って座っていたのに、フラフラと横に座ってきた。距離がとても近かった。

可愛いね」とAは言ってきた。「今日彼氏がいないから言えるけど、会った時はいつも可愛いなと思ってた」と言われ「そんなことないよ…でも、ありがとう」と返した。照れたのと酔っていたのもあって、顔はかなり火照っていたと思う。その時、私には彼氏に対する罪悪感なんてなかった。ただ嬉しかった。純粋に認められた感じがした。Aはかっこよかったし、モテた。そんな人に可愛いと言われただけで、私の承認欲求は満たされた。と思っていた。

もう少し、あと少し、欲しがってしまった。彼氏嫉妬させたかった。秘密が欲しくなった。一人からだけじゃなくて、沢山の男の人から、例えそれが汚くても、本物じゃなくても、愛が欲しいと思ってしまった。男の人の、理性というコップに、表面張力で踏みとどまっている水である本能をこぼす方法は知っていた。あと一滴。

言葉やあからさまな態度なんて必要ない、私はAの目をじっと見つめた。「そんな可愛いと、欲しくなっちゃうよ」と言って、Aは私の後頭部に腕を回して、唇を重ねてきた。激しく、貪るように舌を入れてきて、私もそれに応じた。ベロベロに酔っている時のキスは、上手い下手関係なく最高だとぼんやり脳に刻まれた。ただ、何も考えずにキスをしていた。

唇を離して、呼吸を整える。目の焦点がなかなか合わなかった。頭がボーッとした。Aがいつもよりさらにかっこよく見えた。Aが何か言おうとして口を動かしたその時、Bがすっきりした様子でトイレから戻ってきた。

何事もなく、それぞれの家に帰った。その後Aと連絡を取ることはなかった。そして、彼氏とはその年の11月に大喧嘩をして別れた。

私は今でも童貞だ。

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