俺たちはこれ見よがしにガッカリした。
「つまんねえデザインだな」
「キミたちが未来にどういう期待をしているか分からないけれども、こういうアイテムは装飾を気にする意味がないんだ」
にしても、数ある候補の中から“それ”なのかって気持ちはあるけど。
「他にもっと良いのあるんじゃねえの?」
「制約がなければ確かにそうだけど、効果の強すぎるアイテムだと未来に大きな悪影響を与えやすいから……」
また“これ”だ。
未来に悪影響を与えすぎるって言って、こいつはいつも地味なアイテムしか出してこない。
「あ、でも効果は素晴らしいものだよ。これのおかげで、ボクたちの未来は社会がかなり最適化されたんだから」
俺たちの反応の鈍さを察したのか、焦ったガイドはアイテムの説明をして挽回しようとしている。
「そうか……うーん、どこまで噛み砕けば、この時代の子供には伝わるかな……」
こいつ、ちょいちょい俺たちのことを見下している気がする。
言葉の端々に、そういうのがにじみ出ているというか。
兄貴がガイドを嫌うのも、多分そういうところが鼻に付いたからなんだろうな。
「かな~り大雑把な説明をするなら、要は悪いことをすれば報いを受けるべきって考え方だね」
ああ、その考え方は俺たちの時代にもあるな。
「でも、この考え方には欠点があるよね。漠然としすぎている。悪事に対して、その報いが適切なものかってのは正確には分からない」
仲間のミミセンがそう返すと、ガイドは溜め息を吐いた。
なんか、イラっとくる。
「もちろん、ボクたちの時代でも法律やルールといったものはあるさ。でも、キミたちの時代は、まだそれが洗練されていない。使い方もいい加減だ。しかも犯罪者への刑罰が適切かどうかを数人だけで意見を交し、それにやたらと時間をかけるなんて非効率すぎるよ」
また俺たちの時代をバカにしているのがムカつくが、ガイドの言いたいことは何となく分かってきた。
「つまり、それを効率的にするのが、その『罪罰メーター』ってこと?」
「そういうことだね。長年の研究によって、因果を可視化、数値化することができたんだ」
確かに、今まで不可能だと思われていたものが、可能になったという点では未来のアイテムっぽいな。
やっぱり地味だが。
「これは画期的な発明なんだよ。裁判の効率化はもちろん、民間の些細なトラブルですら、これがあれば正確に判断することができるんだから」
それに胡散臭い。
「疑っているようだね……。じゃあ、試しに使ってみせるよ」
俺たちの住む街の外れにある、通称「貧困街」。 その隣には、「低所得者エリア」と呼ばれている地域がある。 これといった名所がなく、交通は不便。 その割に電車や飛行機が近く...
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≪ 前 こうしてガイドによる第○回、未来のプレゼンが始まった。 ガイドが罪罰メーターの説明をしている間、兄貴は何も言わず話を聞いている。 時おり何かを言いたそうに口がもご...
≪ 前 この時点で俺たちは、ガイドが家から追い出される未来を予見した。 キトゥンもそれを察したのか、兄貴の膝上からそそくさと降りる。 だけど、兄貴は木刀をまだ手に取らない...
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