こうしてガイドは罪罰メーターを片手に、当初の目的である協力者探しを始めた。
暇なので、断る理由はないけど。
「キミたち、邪魔だけはしないでくれよ」
あっちからついてくるよう頼んできたくせに、この言い草はイラっとくるが、俺たちはテキトーに相槌を打つ。
この「大丈夫」っていうのは「邪魔をしない」っていう意味と、「どうせ失敗するから」って意味がある。
俺たちは今回も失敗するだろうな、と何となく感じていた。
上手く言葉にはできないけど、この罪罰メーターのプロモーションには、何か欠点があると思ったんだ。
ガイドが訪れたのは、俺の家。
「……また、お前かよ」
ガイドが着ている服にはステルス機能があるらしく、これで俺たちに紛れて家に侵入した。
俺たちがいて、かつ家の中に入ってしまえば、兄貴も無理やり追い出したりはしないだろうと考えてのことだ。
だけど兄貴は木刀を携え、いつでも追い出せるよう準備をし始めていた。
「他にも候補がいるだろうに、何で俺んところに真っ先に来るんだ?」
兄貴の口調が荒くなり、木刀を握る力が強くなっているのが分かる。
兄貴は感情があまり表に出てこなくて、出ようとしても隠したがる人間だ。
そんな兄貴が感情を前面に出しているってことは、ガイドに対して取り繕う気すらないほどにイラついているってことだ。
このままだとキレるかもしれない。
そう思った俺たちは、慌てて間に入った。
キレた兄貴は、俺たちが束になっても止められるか怪しいからな。
「まあまあ、兄貴。こんなに一生懸命なんだから、話だけでも聞いてあげなよ」
「頼むよ。マスダの兄ちゃん」
「私、どっちでもいいけど、ここまできたら聞く位はしてあげたら?」
「……マスダの、に、兄ちゃんが、ど、どうしても嫌だって言うなら仕方ないけど……」
「はあ……全く。セールスマンが絶滅した時代になってから、お前らみたいな良い子が生まれてきて本当に安心した」
すると、飼い猫のキトゥンが近づいて、兄貴の膝元にうずくまってくる。
まだちょっと刺々しいが、かなり落ち着いてきているようだ。
「シロクロ、マスダくんを殴ってみて」 「あぁん? なして?」 さすがのシロクロも困惑している。 というか、ガイド以外も皆そうだ。 たぶん罪罰メーターの効果を実証したいんだ...
そう言って、ガイドが俺たちにアイテムを見せた。 「ええー? それが未来のアイテム?」 見た目はスマホに似ていて、あまり未知の未来っぽさがない。 俺たちはこれ見よがしにガ...
俺たちの住む街の外れにある、通称「貧困街」。 その隣には、「低所得者エリア」と呼ばれている地域がある。 これといった名所がなく、交通は不便。 その割に電車や飛行機が近く...
≪ 前 こうしてガイドによる第○回、未来のプレゼンが始まった。 ガイドが罪罰メーターの説明をしている間、兄貴は何も言わず話を聞いている。 時おり何かを言いたそうに口がもご...
≪ 前 この時点で俺たちは、ガイドが家から追い出される未来を予見した。 キトゥンもそれを察したのか、兄貴の膝上からそそくさと降りる。 だけど、兄貴は木刀をまだ手に取らない...
≪ 前 「理解に苦しむよ。どうしてこの機械よりも、自分たちの方が罪の重さを正しく推し量れると思えるんだ」 ガイドのその言葉に、兄貴は深い溜め息を吐いた。 その溜め息は呆れ...