2018-07-01

[] #58-3「罪罰メーター」

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「シロクロ、マスダくんを殴ってみて」

「あぁん? なして?」

さすがのシロクロも困惑している。

というか、ガイド以外も皆そうだ。

たぶん罪罰メーターの効果実証したいんだろうけど人選がおかしい。

この中で一番力のあるシロクロにやらせるとか、ふざけてんのか。

やられる相手にしても、俺じゃなくてガイド自身がやればいいだろ。

「……いいよ、シロクロ。やってくれ」

だけど、ここでグダグダ文句を言うのもカッコ悪い気がして、俺は渋々とシロクロに促した。

オーケー! 歯ァ食いしばれ!」

そう言ってシロクロは、間を置かずに掌底を浴びせてきた。

これでは問答無用と大して変わらない。

声すら上げることができず俺は盛大に吹っ飛び、壁に激突した。

「マ、マスダ!?

ちょっと、シロクロ! 確かにマスダは了承したけど、全力でやる必要はないでしょ!」

「正直スマンかった。半分くらいの力でやったつもりなんだが」

もしも「全力でこい」で言ってたら、俺は死んでたかもな。

とはいえ、計測はちゃんと出来ているよ。ほら、シロクロのメーターが貯まってる」

まだ意識朦朧としているので良く見えないが、粛々と話を進めるガイドに対して俺の怒りメーターが確実に貯まっていくのだけは分かった。

「うおおおお、俺は罪人だー……」

罪罰メーターを見てシロクロがうな垂れている。

周りに指示されたからやっただけなのに、ちょっと気の毒だな。

罪は罪ってことなんだろうけど。

「で、この罪メーターが貯まった人間に、相応の罰を与えれば減っていくんだ」

「げほっ……“相応の罰”って?」

喋れるようになるまで調子を取り戻した俺はガイドに尋ねた。

「うーん、じゃあ今回は分かりやすく行こう。マスダくんがシロクロを殴ればいい。自分がやられたのと同じ方法威力で」

かに、同じ手段でやり返せばチャラっていうのは分かりやすいな。

「だけど同じ威力ってなると、難しいぞ」

「ああ、一発でプラマイゼロにする必要はないよ。個別計算してくれるから

なるほど、合計でもいいってわけね。

「じゃあ、行くぞ。シロクロ」

バッチ! カムオン!」

俺はシロクロに掌底の連打を浴びせる。

さっきシロクロにやられた場所を狙った。

ストップ! シロクロの罪メーターがなくなった」

数発打ち込んだあたりで、ガイドが止めてきた。

だけどシロクロは平然としている。

「ええ? 本当にこれでチャラなのか?」

俺みたいに吹っ飛んだり、壁に激突したり、息が数秒間できなくなったわけでもないぞ。

「罪ってのは一面的ものではないからね。シロクロはボクらに『やれ』と言われたからやったわけで、それが罪メーターの計算に含まれているんだ」

なるほど、意外と色々計算してるんだなあ。

なんだか納得いかないけど。

「ん? ということは、もしかしてガイドにも……」

ミミセンが何かに気づいたようだ。

「そう、ボクもシロクロに暴力をするよう煽ったので、罪メーターが貯まっている」

メーターを見てみると、シロクロとは別の項目にも貯まっているのが確認できる。

これがガイドの罪メータなのだろう。

そういうのも測ってくれるのか。

「案外ちゃんとしているんだな」

「そうだよ、すごいアイテムだぶふェっ!」

俺は罪罰メーターの効果に感心しながら、ガイドの頬を引っ叩く。

「いてて……あ、まだ罪メーターが残ってるね。さっきの6割くらいの力で、もう一回叩いて」

そう言って頬を差し出すガイドに、俺は少しだけ鳥肌が立った。

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