2016-09-18

「なぜジェラート・ピケは売れるのか?」

 昨日、同僚のS氏と会議室新規案件ブランディングアイデアを出し合ってた。

 あんまりアイデアも出なくて、適当ネットを開いていたらジェラート・ピケのサイトにいつもは口数の少ないS氏が横から謎の食いつきをみせた。それから展開された彼のジェラピケ論が少し興味深く、大いに滑稽でそのことについてちょっと書こうと思う。

 

「なぜジェラート・ピケは売れていると思う?」

 はじめ彼はそう聞いた。

 わたしは持っているジェラートピケを思い返しながら、着心地が良くてかわいいと答えた。

「まるで繊細な砂糖菓子、綿菓子みたいに」

 彼はそう言葉を加えた。

 S氏はなんていうか言葉が甘く、ロマンチストのきらいがある。なんでジェラピケの着心地を知ってるのと聞きたくなったけれど、その前に彼が言葉を続けた。

ジェラート・ピケのすごいところは、その、"食べるもの"にするからだと思う」

ちょっと、何言ってるかわかんない」

 わたしは率直に言った。

「えっと、つまり、着ている人を"食べるもの"にかえるんだよ」

 はあ、なんのために?と聞いたところで、彼は、

「オトコ」と言った。

ちょっと何言ってるかわかんない」

 わたしが言って笑うとS氏も笑った。

 彼はジェラピケのコンセプトページを開いて見せた。

"アイスクリームに包まれているようなふわふわ幸せ感覚"

"まるで自分がデザートになったかのような気持ちにさせてくれるルームウェア、ジェラート・ピケ"

"女の子にしなやかな魔法 PIQUE MAGIC をかけるのです"

 ページにはそんな言葉が並び、最後にはジェラピケを着て"食べるもの"になった女の子ソファで横になっていた。

 へー、とわたしは思わず声を出した。

 デザートの意味合い女と男で違っているのか。ジェラピケを着ていながらそんなこと思ってもみなかった。

 わたしが鈍いだけなんだろうか、他の愛用している女性はそこまで考えてるんだろうか。喪女がきいたら発狂しそうな話だ。

 S氏がコレクションページに画面を変えると、トップにはジェラピケを着てベッドですやすやと眠る女の子が映った。

「今さ、不意に勝負下着って言葉が浮かんだ。

 女性を"食べるもの"にしたてるブランドは他にもあるけど、やっぱジェラピケは一線を画すというか、立ち位置が真似できない。

 例えば……これ、」

 S氏は別タブでpeach johnサイトを開いた。

 ちょうどオータムドルチェというキャンペーンで下着の女性が色とりどりのドルチェ見立てられて並んでいた。口紅をさしたモデルたちは谷間が強調され腰はくびれている。バチバチのごりごりの女のイメージがそこにあった。

「どのブランドも単純に女性性を強調していくとこうなっていく。アメリカ的というか肉食的というか、あからさまで力勝負。言うならば恥じらいがない、エロティシズムが足りない」

 画面を見ながら真面目に話すS氏に、それはキミのシュミではないか、と思ったけれどそれは言わずに、ジェラピケは違うんだ、と聞いた。

「ジェラピケにはあざとさというか、巧さがある」

 はあ。息を抜くようにわたし曖昧にうなずいた。

 勢いに乗って話す彼はわたしの反応も気にせず話をつづけた。

「ジェラピケはまず着ている人を満足させてくれる。

 かわいくて着心地が良くて、なんていうかその自分用に仕立てられている感じは特別感を感じさせてくれる。

 でもその特別感をより引き立てるのにまだ足りないものがある。

 なんだと思う?」

 わたしはすこしめどくさそうに首を横に振った。

「オトコに愛でられることだと思う。イケてるメンズ女の子扱いをしてもらうことで特別感は最高潮に達するんだと思う。

 大事なのは自分あくま女の子であることで、それらしいことは微塵も表情に出さず、自らの手は一切汚さずにコトを満たすこと、むしろほしいままにすることにあると思う。そして、そのあざとさというかズルさを完璧に巧妙に演出する道具としてジェラピケほど適したものはない。」

 

 S、一体、おまえはどんな女と付き合ってきたのか、その女の人に会ってみたい。

 そんなことを思いながらわたしは笑ってしまった。

 この話の後、なんかジェラピケ、着にくくなったのは確かだ笑

gelatopique http://gelatopique.com/concept.html

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