吉田「ああ、そう。うん…………俺は何時に行けばいいの? うん……ああ、わかった」
これまで、1000人以上にインタビューしてきた。
誰かの400戦無敗みたいなハッタリじゃない。
でもそれは、700人を過ぎた辺りから、いちいち数えているヒマがなくなったからってだけの話だ」
「インタビューの依頼を受ける」
BG 回想。資料を机に並べる吉田
調べて、調べて、調べて……もういいかと思ったところから、更に調べる」
そこまでやらなければ、伝わらない」
「何がって? それは……
え?『怖くありませんか』?
ああ、それは無い。
「インタビューする相手のことを調べつくすと、ある瞬間、
突然相手の姿が、浮かび上がってくる――はは、そうだな。
『3D映画みたいに』な」
「そうすると分かるんだ。
相手が、何を望んでいるか。
どうすれば『伝わる』のか……」
「そうすれば、後は簡単だ。
インタビュー当日、相手に伝えてやるだけでいい。
『私は、あなたが、大好きです』――ってな。
机には、これまで自分が行ってきたインタビューの掲載誌が広げられている。
「空手家、ヤクザ、格闘家、劇画原作者、プロレスラー、ケンカ自慢の有名人……
もちろん、ハッタリもかなり混ざってる、武勇伝。
しかし、絶対にハッタリじゃない……ハッタリに出来ないものがある」
「それは――恐怖。
BG 回想。歯を食いしばり、必至に何かに堪えている様な表情のインタビュー相手(複数)。
『あれか』と思い浮かぶようになり、
次々と結びついていって、それで――決め手は、あれだった」
「依頼は一週間後。
月曜日の14時。
相手は――」
吉田、後ろを振り向く。
シャクシャクシャクッ!
「変わらない。やることはいつもと同じだ。
相手を調べつくして、そして――」
吉田、呟く
「不覚――屈辱!」
「とうとう分からなかった!」
「どうする?(部屋で見た勇次郎の幻を思い出しながら)あんなの
を相手に、どう伝える?」
「『あなたが好きです』って――どうやって?」
部屋に招き入れられて、吉田、硬直する。
勇次郎「よお。楽しみにしてたぜ。俺より、俺に詳しいんだってな?」
吉田の背後に文字「ア・ナ・タ・ガ・ス・キ・デ・ス」
「わかった。
しかし――いや!
やるしかない!
やらなきゃ――死ぬ!
生き物としての俺が!
吉田「おdsfjfdlksfjdskjfdskljfsっ!!!」
吉田モノローグ「この人を喜ばせるには!!! これしかない!!!!!!!」
吹っ飛ばされて転がり、壁にぶつかって止まる吉田。
勇次郎「分かってるじゃねえか……俺の喜ばせ方をよ」
似たりと笑って言った後、どこか神妙な顔になって勇次郎
勇次郎「なんというか、その……『伝わって』? きたぜ?」
<了>