「虐殺器官」という本を読んだ。
読みおわってつまらなかったなーと思い、しかもただつまらなかっただけでなく読んでてイライラしてストレス溜まるタイプのつまらなさだったから、これは星1のAmazonレビュー見に行ってうさをはらそう、としたら意外にひょうかたかい。なんでかしら。
この本にストレス溜まったのは、わりと同じ理由でいらつく本多いんだけど、以下のような点が挙げられる。
・会話が不自然
登場人物がいちいち○○学的な側面からぐだぐだ話す。百文字以上は一息に語る。日常的にこういう話し方する人いないと思うしいたらいらつく。話してるんじゃなくて語ってる。
・登場人物が没個性
こいつら基本的に同じ思考パターンしてやがる。わかりあえなさがない。こんな人間ばっかならそりゃ凄まじいスピードで虐殺文法浸透しますわね、という感じ。社会ってもっと多種多様な人間がいて、それによって生まれる不協和音におもしろみがあると思うんだけど、たぶんこの世界の人間の性格パターンって一つしかない。同じ人間が別々のバックグラウンドをもってるだけって印象。
・主人公の語りがうざい
一人称の小説なので文章の大半は主人公の語りなのだけど、いちいち二千一年宇宙の旅だのモンティパイソンだのをおりまぜてくる。単純にノイズ。あとなぜスターウォーズと銀河ヒッチハイクガイドが同居してるの? どちらかに絞ってほしい。あと主人公はほんとにアメリカ人なの? この小説は『海外小説を翻訳しました風』な文体なのだけど、なんか主人公がアメリカンな心情を持っているとは到底思えない。ついでに言うなれば、なんでか『日本』がちょこちょこと出てくる(オーサカの工場、とかジエータイ、とか)だけど、これも海外小説っぽくなくて違和感がある。海外小説に『日本』がぴょこっとでてきておおっと思うのって、卵が双子だったみたいなプチハッピー体験なのだけど、頻度多過ぎて逆にしらける。
そして主人公は戦闘中に生命の危機を覚えることもなく(これは未来テクノロジーの恩恵という説明になっているけど)、悩みを語るときもそこには気の利いてる風例えがワンセットになっているので、彼に共感することもできない。結果、白々と淡々と読み進めるだけになってしまう。
あと、虐殺の文法の説明少ないとか銃撃戦の最中に気の利いた会話してていいの? とかいろいろあるのだけど、結局内面のリアリティとSFのリアリティと、どっちも中途半端なのが最大要因かなあと思う。どっちかしっかりしてればまだスムーズによめたんだろうけど、両者がやわやわなので中国のビル並みの耐震強度になってる。