『スプラトゥーン3』の「ブキヘイト」に気をつけて それで誰が“得”をするのか?
https://jp.ign.com/splatoon-3/62911/opinion/3
要約
・SNS上で『スプラトゥーン3』の「特定のブキが強すぎる」「この要素が卑怯すぎる」といった話題=「ブキヘイト」が散見されている。
・現在はそもそもの性能が高い上にバグで地形を貫通したりできる「スクリュースロッシャー(スクスロ)」が特に槍玉に挙げられている。
・一つ目はゲームバランスの操作。「特定のブキが強すぎる」と騒ぐことで運営に弱体化をさせるため。
・二つ目は忌避感を与えること。「この戦法は卑怯だ」と印象づけることでその戦法を使うプレイヤー自体を減らすため。
・三つ目は注目を集めること。シンプルに承認欲求のため、もしくはPVを集めてお金を稼ぐため。
・「完璧なゲームバランス」は実現し得ないので「ブキヘイト」によって特定のブキが弱体化されたとしても、また別のブキにヘイトが集まるだけ。
・プレイヤーが求めるべきなのは「特定のブキの弱体化」ではなく「なるべく理想的なバランスに近づくような調整」。「ブキヘイト」は前者を目的としているので健全ではなく、無益で有害。
・とはいえ不具合についての情報共有は大事。(これは本旨ではない)
・結局「ブキヘイト」はただ文句を言っているだけでなんの意味もない。真に受けないほうがいい。
この内の「ゲームバランス」についての筆者の意見には意義があるので書き記す。
まず筆者は「理想的なバランス」というものがあって、それをプレイヤーは「求めるべきである」と言っている。「理想的なバランス」とは恐らく「全てのブキの強さor勝率or使用率が均等である状態」を指しているのだろう。
これは大きな間違いである。プレイヤーはどんな環境を望んでも構わない。自分の持ちブキが一番強い状態を望んでもいいし、あるいは強すぎず弱すぎず、イナゴに荒らされない程度の強さを求めても構わない。もしくは弱いとされるブキで戦い抜くのが楽しいというプレイヤーもいる。
また筆者は「われわれの願いは『より優れた環境になってほしい』というものだ」とも言っている。ここで言う「優れた環境」とは前述の「理想的なバランス」とほぼ同義だろう。
これも違う。対戦ゲームにおいて最も求められているのはバランスではなく「楽しさ、快適さ」である。全部のブキが同じ強さなのではなく、相手をしていて楽しいブキが多く(≒強く)、不快なブキが少ない(≒弱い)環境が求められているのだ。
「ブキヘイト」が多くされている(いた)ブキには、「スクリュースロッシャー」「リッター4K」「スプラチャージャー」「.52ガロン」「クラッシュブラスター」「スプラローラー」「ホクサイ」「デュアルスイーパー」「パラシェルター」などがある。
これらの共通点は「強さ」や「数の多さ」よりも「理不尽さ」「やられたときの不快感」にある。ある程度『スプラトゥーン』をやり込んでいる人の中では「クラブラ弱すぎ!強化しろ!」という意見より「クラブラ不快だから弱いままでいてほしい」という意見のほうが圧倒的に多い。
また『Splatoon3』第一回目のフェスでスクスロの次に強いとされた「シャープマーカー」は不快感がそこまでないブキなのでヘイトを集めていない(サブウェポンのクイックボムはその限りではないが)。
このことからプレイヤーは「理想的なバランスの環境」なんかより「不快感が少なく、楽しくプレイできる環境」を求めていることが分かるだろう。
そしてこの事が最も顕著に現れたのが「オフロ死ね」事件である(オフロとは「オーバーフロッシャー」というブキの通称)。簡単に説明すると公式大会の勝利者インタビュー生放送で、あるプレイヤーが中指を突き立てながら「オフロ死ね」と発言した、という事件である。
当時のオーバーフロッシャーはかなりヘイトを集めていたブキではあったが、公式大会という場であまりに過激な発言がなされたことからまとめサイトなどでも大きく取り上げられ、かなり炎上し話題になった。さらに公式大会が終わった次のアップデートで、(ヘイトは高かったが)特段強いわけではなかったオーバーフロッシャーが大きく弱体化されたことがより一層注目を集めた。
この調整の本当の意図は公式にしか分からないし「Splatoon2」のアップデート更新内容のページでは「バランス調整はデータから判断する」と記載されてはいるが、この事件を通して「多くのプレイヤーが不快感を感じるような、ヘイトを集めやすいブキは弱体化される」ということがプレイヤーに広まってしまった。
この他にもあるアップデートでは「わかばシューターが環境に多いから弱体化されるだろう」という予想を覆し、むしろ強化されたということもあり、これも「わかばシューターは不快なブキでは(比較的)ないから弱体化されなかった」という理由なら納得できる。
そしてそれが正しいと思っているからわれわれ一般プレイヤーは「ブキヘイト」という「お気持ち表明」をするのだ。「私はこのブキ、戦法が不快なので嫌いです(だから弱体化して数を減らし、楽しくプレイさせてくれ)」と。
これが私が最も言いたいことである。
ここからは余談
「弱体化したら本当に使い手が減るのか」という問題もある。特にチャージャーは「チャージャーしか使わない!」というプレイヤーも多いので弱体化しても意味がないのでは、という意見がある。
これに関しては難しい問題だが個人的には「使い手自体は減らなくても、そもそもの理不尽さ(チャージャーであれば圧倒的射程とキル性能)が減るような弱体化なら効果がある」と考える。例えばチャージ時間や射程に対してのクリティカルな弱体化である。逆にインク消費量やスペシャル必要ポイントなどの弱体化は、ギアパワーで補完することが出来るのであまり意味がない。
スクリュースロッシャーに関しても(貫通バグを直すのは当然として)理不尽さを感じる原因である「当たり判定の大きさ」自体を弱体化するのが一番いい。
しかしここまで書いてきてなんだが「プレイヤーが求めている環境」を公式が理解していたとしても、実際にそれを実現するか(もしくは出来るか)は公式にしか分からない。
「スクリュースロッシャー」「リッター4K」「スプラチャージャー」「.52ガロン」「クラッシュブラスター」「スプラローラー」「ホクサイ」「デュアルスイーパー」「パラシェルター」...