私にとっては最高の映画でしたが賛否両論あるのも納得の内容でした。
20年前、マトリックス三部作の仮想現実ではその頃のインターネットに対して漠然と抱かれていた、老若男女人種言語関係なく平等に戦える未来の世界というイメージや、アングラ感からくる怪しさのようなイメージを描写していました。
謎の多い世界で真実に目覚めた救世主が機械と派手に戦い人類を救う物語は全世界的に大成功を収めました。
そういう成功体験もありますし、バックにいるのもWBですから商業的にどうすれば成功するかなんて承知の上でウォシャウスキー監督は、あえて今のインターネットに抱くイメージを新作のマトリックスに落とし込んだのでしょう。
三部作から20年後の現代ではSNS人口の拡大のおかげで回線の向こうにいる誰かの生活臭すら感じられそうになるほどインターネットの怪しさは薄れ、誰かが収入目的や遊び道具として出来の悪いbotをばらまくしょうもない世界になったのに、一人一台レベルまで普及したスマホによってどこからでもアクセスできるためそこから容易には抜け出せなくなりました。
色調が緑色に怪しく補正されることもなくなりアングラ世界の象徴みたいなメロビンジアンは没落しエージェントはbotに役目を奪われ新たに目覚める人類もいなくなりました。
そしてマトリックスの外の世界では機械と人間の休戦状態が続いているためネオが救世主として活躍する場もありません。だからネオはトリニティただ一人のために戦います。
しょうもないのに抜け出せないバーチャルな世界を舞台にした物語なら、現実で触れ合う誰かとの縁の大切さがテーマになるのはありきたりではありますが自然なことです。
ありきたりというのは多くの人がその結論に至るということでもあるので馬鹿にはできませんし。
成功したいなら昔と同じミステリアスな世界で昔と同じように救世主が人類の危機に立ち向かうストーリーにすればよかったのは映画に詳しくない私でもわかります。
しかし誰かの期待に応えて内容を決めるというのはマトリックスのテーマの一つである「選択と自由意志」を監督自ら破ることにも繋がります。
だから以前のような魅力を持たなくなった世界で仲間の力を借りながら大切な誰かのためのストーリーにすることを自由意志で選択したのでしょう。
レザレクションズに以前のシリーズのようなノリを期待していた人には残念ではありますが、ウォシャウスキー監督はとてもテーマに対して誠実で愚直だと思います。
人気シリーズのリブートでこういう映画を作ってくれた監督をはじめとしたスタッフの皆さんと出演者の皆さん、ゴーサインを出したワーナーブラザーズには感謝しかありません。
もう上映終了している映画館も多いと思いますが、みんながこの映画を観てマトリックスを好きになったり嫌いになったりしてほしいなと思います。