2021-06-11

部活外注することが間違っている理由

藤原 元々、家庭や地域社会での教育がうまくいっていないのなら、学校子供たちを囲い込もうと考えたんです。最初ビジネスマン感覚で、先生が授業に集中できるよう、余計なことは外部に発注すべきだと思った。部活も、たとえばサッカーなら校外のクラブチームの方がいいだろうと。ところが、赴任して2カ月で、その考えが間違いだと分かりました。

 なぜなら、今の生徒の3割は、家庭で学習フォローできない。1割は完全に家庭が破たんしている。3割の子は、サッカー部があるからこそサッカーができる。ビジネスマンは強いもの同士の世界から、どうしても世の中のそういう面が見えていなかった。そこで、むしろ生徒をできるだけ長く学校にいさせるべきだと考えて、ドテラ(土曜寺子屋)を始めたんです。土曜の午前にその週に出た宿題学校でやり、分からなければボランティア大学生に聞く。午後は部活です。

 次に部活をしていない子の放課後。まず、図書室にカーペットを敷いて、漫画も入れました。7コマ授業の日もあるから勉強の後は、横たわって漫画を読んだっていい。改装後は、PTAのOG地域のおばちゃんたちが運営してくれています本が好きで、中学生女の子と語るのも楽しいからと。

 中学生って、反抗期から自分母親には「てめえ」とか「ばばあ」とか言うけれど、人の母親には絶対そう言わない。よそのおじちゃんやおばちゃんには、ある意味で心を割って話す。そういう、「ナナメ関係」ができるんです。

 次は夜や土曜に、もっと勉強をしたい子向けに英語を教え始めた。後の夜スペ夜スペシャル)へつながるものです。これは中野区にある私塾の塾頭が来てくれた。この成果で、今の3年生は、昨年度末時点で英検3級以上が過半数しかもその子たちが、ほかの子英語を教え始めた。それで、以前は区で23校中16〜21位だった英語の平均点が、断トツ1位になった。夜スペは「上の子だけを持ち上げておかしい」と言われましたが、それは学校ダイナミズムを分かっていない人の批判。上の子が伸びれば、中下位層も引き上げられます

校庭の緑の手入れも、地域に適した人たちがいた。マンションに住むガーデニング好きなお父さんたちです。狭いベランダしかなかった彼らが、10畳、20畳の広さを任せられると、喜んで芝を刈り、ブルーベリー園やハーブ園を作るんです。

 地域全部が同じ形で学校に協力するのではなく、それぞれが一番いい形で学校と結びついた。その総体地域本部です。単に地域の世話好きに学校を任せた、ではないんです。

 中島 つまり地域の新たな文脈作りをした。

 藤原 古い形の地域社会ではなく、新しく編集された地域社会学校内にできました。

  • 練習日の週末がこわい「早死にする」と感じた保護者負担 https://www.asahi.com/articles/ASP5J6SYTP4YUTQP01N.html

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