確かに私は入学試験以来一度もキャンパスに足を踏み入れていないし、講義もすべてオンラインで行われている。
どうやらこれは新型コロナウイルスというものの流行が原因らしい。
いま、私は思い描いていた大学生活のどれくらいを満たすことが出来ているか、と時々考える。
幸いにもツイッターで見つけた音楽系のサークルに入り、(キャンパスには行けないけど)活動している。
けれど残念ながら学科の友達はほとんどできていない。その理由は明白で、実際に遭ったことがないからだ。
私は同級生の顔から下を知らない。名前と、性別以外の情報をほとんど知らない。
趣味は何で、何を目指して大学に来たのか、出身はどこなのか、どこでアルバイトをしているのか、何一つ知らない。
前期の英語の時間にはグループワークをしたことがあった。でも最終回の発表が終われば、それで解散。
そのあとパフェを食べに行くこともないし、直接「おつかれ」をいうこともできない。
たぶん、日本全体で多くの大学生が私と同じか、もっとひどく悩んでいると思う。
社会は自粛を覚えてしまった。何年か後、元に戻るとしても、大学一年生としての私はもういない。
夏頃、アルバイトの面接に行った時、店長に「かわいそうだね」と言われた。
実家の両親や祖父母からも「大変な時に学生になってかわいそうだ。タイミングが悪かった」と言われたことがある。
少しググってみると、日本では23万人が新型コロナウイルスというやつに感染して、3,500人くらいが亡くなったらしい。
日本の人口はおよそ1.2億だから、0.2%が感染して、0.003%くらいが亡くなった計算になる、多分。
スマホの電卓ではじき出されたこれらの数字を見て、思わず「少な」という声が出た。
どおりで周りに死者はおろか、感染した人すらいないわけだ。
私たちを「かわいそう」にさせているものの正体は、小数第二桁まで続く0だったのだ。
だから私は思う。
せめて私たちを「かわいそう」にさせているものは大惨事であって欲しい、と。
ああ、これなら仕方ないなと思えるようなひどい出来事であって欲しい、と。
不謹慎だと言われるけれど、私はもっともっと感染が拡大してほしいと思っている。
海の向こうの遠い国のように一日に何万人の感染者が出てほしいと思っている。
少し手を伸ばせば死者に手が届くような恐怖感が蔓延してほしいと思っている。
この想いを秘めて、私は大晦日の街に出る。
>顔から下を知らない (゚∀゚ )
>顔から下を知らない (゚∀゚ )ティンコビンビン!