2020-10-21

人妻と妻と『俺の母校めぐり

この増田フィクションです。登場する人物団体名称等は架空であり、

実在のものとは関係ありません。

俺は結婚前、ある人妻と付き合っていた。

仮にこの人妻里子としよう。

里子提案で、俺の地元温泉巡りに行った時の話である

駅前レンタカーを借り、見慣れた風景の中を懐かしく思いながら車を流していた。

その風景の中に味気ないクリーム色をした小学校の校舎が見えてきた。

「あ、ここ俺が行ってた小学校なんですよね」

何の気なしに里子に話しかけた。

「ふうん、そうなんだ。あ、でも『俺の母校めぐり』はしなくていいからね」

里子はそう言っていたずらっぽく笑い、いつものクシャっとした笑顔を向けた。

「うん、大丈夫ですよ、そんなことしませんよ」

俺も里子と、その背後に見えるクリーム色の建物を見ながら笑って応えた。

「このジャングルジムてっぺんから落ちて骨折してさ」

「校舎裏に原っぱがあってカマキリたくさん捕まえてさ」

自殺した児童幽霊放送室に出るって噂があってさ」

こういった類の話は得てして、その時間、その土地にいた者以外にとっては

「ふうん、そうなんだ」で終わってしまものである

そういった性格的な了解里子と俺の間にはあったため、冗談を言い合い

じゃれあうようにしながら目的地の温泉地へ向けアクセルを踏んだ。

二年後、俺は里子との関係清算した。

三年後、俺は現在の妻と結婚した。

仮にこの妻を良子としよう。

良子の提案で、彼女大学院時代にすごした地方都市旅行に行くことになった。

「このカフェがとってもお気に入りで、ほとんど毎日来てたんだ」

当時の彼女の友人らも交え酸味の少ないコーヒーを啜る。

「あ、ここが昔住んでたアパート。ぼろいけどまだ人住んでるね」

寒風を真正面に受けながら住宅街を歩く。

「この飲み屋はね、BGMが素敵なの。あ、今日はお休みみたいね

軒先のビールケースと使用済みおしぼりがただじっと回収を待っている。

良子は、里子が言うところの『俺の母校めぐり』をほぼ無自覚に、

いやここでは無邪気に、と言った方が正確に思えるが、行っていた。

俺は、知らない土地をめぐる旅を楽しんではいたし、

良子を愛しているし、俺にはないその無邪気さが

より一層彼女を魅力的にしている数多くの要素のひとつだということも分かっている。

ただ、たまに、里子のことを懐かしく焦がれる瞬間がある。

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