※ヒプノシスマイクというコンテンツの概要については省略します。
アパルトヘイトを持ち出すまでもなく中王区は間違っている。
と自分に言い聞かせるけれど、どうしても中王区に憧れる気持ちが消えない。
あの壁の中は現実よりずっと幸せな世界ではないかと思ってしまう。
途中まで情報が少なくて勘違いしていたのだけれど、ヒプマイの世界はH歴が始まるまでは普通の男尊女卑社会なのね。
コミカライズで乙統女がクーデターを宣言したあとの人々の発言が顕著で。
(『ヒプノシスマイク-Before The Battle- The Dirty Dawg』1巻 track-1)
「女が調子に乗ってんじゃねー」
「さっき映ってた偉そうなババアみたいにしてみろや!」
「女なんてのは男の道具なんだよ!」
「ざっけんなよ! 何が女主体だ!」
という感じで。ありふれた罵声が名もなき男性たちから叫ばれていて、作品の設定は戦時下だけれど、ベースは現実と同じような社会なのだとわかる。
そう思うと中王区の、男性だけを圧迫する異常な政治にカタルシスを感じてしまう。復讐心を満たしてくれるわくわくした気持ちになって、ざまあみろと言いたくなる。
ざまあみろ、これからはあの「偉そうなババア」が社会を作るんだ。彼女が「男」から権力を奪ってくれたんだ!
さて、とはいえ作中でも中王区は別に全ての女性が救われる世界ではない。
乙統女はクーデターを成功させて、異常な政治で男尊女卑社会を壊そうとしている。でもこれは壁の中に入れる選ばれた女のための世界だ。
壁の中に入れなかった女性たちは普通の延長線上の社会に取り残されているのだろう。
男性だけが圧迫されることになった世界に、それこそ「クソ女ども」と憎まれながら。
(これは想像込みだけれど、作中の名もなき女性たちの生活がさほど変わっていないことを考えると劇的な変化は無いのだと思う)
それでも権力を手にして壇上に立っている三人を見ると夢をみてしまう。
たとえ壁の中に入れる選ばれた優秀な女にはなれなくても、彼女たちがその場所に居る世界なら。
性別を理由に黙って減点するのをやめてくれって言っただけで、ま〜んとか、フェミガーとか罵られずに済むのかな。
一言一句、隙なく論理的にどんなときも冷静でないと許さないと言われながら、暴言と変わらない批判を繰り返されなくて済むのかな。
女に生まれてきたことが嫌になるような叩き潰されかたをしなくて済むのかな。
正しくないことを言えば、中王区への憧れはそんな感傷的なものだけじゃなくて。
強い女に庇護されたいとか。
勝った側の仲間でありたいとか。
性別を消費し返してやりたいとか。
この憎悪をすっきりさせてほしいとか。
だめなものもたくさんあるよ。
念のため言うと中王区がフェミニズムとはまったく違う思想だとはわかっているよ。
ただこうして、だめなところもわかっているけれど夢をみてしまうんです、って言い訳を書くのも、これ書いておかないと揚げ足を取られてボロクソにされるからなんだよね。
ヒプマイが中王区とどんな決着をつける結末になるかは期待はしていない。丁寧に作られた楽曲やキャラクターと比べて、ストーリーがあまりに雑なので、無難に終わってくれたらいいほうだと思う。
言葉の暴力で戦うならまだ良いが、あの世界観だと出生前診断で男身籠ったら堕胎されてそう
単に強い奴から庇護されたいというだけなら別に強い男でも構わないんじゃないっすかねェ?
なんでみんなそんなに考えながらコンテンツを楽しめるの