前日に乗ったという電車のシートについて話をした。自分には当たり前のことだったけど、初めて見たらしい。
走り出した新幹線はやたら静かで、これが最初で最後だと思うと涙が止まらなくなった。
寝たふりをしてごまかした。
のどぐろの炙りを半分食べた。
太刀魚の炙りも食べた。
ホタテと、甘エビ、うに、貝汁。緊張してたのか、好物の茶碗蒸しを食べ損ねた。
やっぱりエンガワだよね。シマアジは野生の味がすると言っていた。
石造りの橋を、あっちの橋の方がかっこいいと。
工事していて、大事なところが見れなかったけど、突発旅っぽくて、それも良かった。
海外からのツアー客に紛れ込んでみようとしたけど、言葉がわからないし早々に追い抜いた。
意外と立派な神社に辿り着いた。意外だった。
外観を見て、かっこいいなと写真を撮った。
カメラを出そうとしたら鳩が寄ってきた。怖い。
コーヒーは辞めたと告げた。
次の目的地は案外近かった。
ここもまた、工事をしていた。そういう時期かな。
一通り歩いて、くだらない話をした。いつぶりだったかな。
展望台に登った。まだ明るくて、なんとなく景色を眺めて、一度出た。
街をふらふら歩いた。寂れていて、どこか違う世界に吸い込まれそうな空気が漂っていた。
それでも嫌な気持ちは全くしなくて、居心地が良かった。誰の視線も気にしなくていいから。
通りをずっと歩いて、もともとの目的地に向かった。
予想の斜め上だった。素通りするレベルで、思っていたものと違った。
意外と日が長くて、じっと沈む夕日を眺めていた。沈まなくていいよと思って見ていた。
完全に日が暮れて、夕食を食べに行った。
移動の車中、反対側の車窓を眺めていた。終わりが近づいていた。
3軒くらい断られたが、最終的に人気らしい焼肉屋に入れた。
好物のウニを乗せた肉寿司、たんステーキ、ユッケ。サラダが思っていた以上に大きくて、笑った。
肉寿司の写真を撮ろうとしたら指を差し出してきた。大きさを比較したかったようだ。
色んな話をした。こんなにゆっくり外で食事をしたのは何年振りか思い出せなかった。
帰り着いてもう少しだけ時間が欲しいと頼んだ。
止めていた車で話をした。本音を全て伝えた。
好きだった、好きだった。どうしても叶わないけど好きだった。
好きになってすぐの頃、お願いした事を最後に頼もうと思っていた。
頼む前にやられた。
あの頃と同じ関係にも同じ気持ちにももう戻る事はできないけれど、それでもずっと好きだ。
何度ありがとうと伝えても伝えきれないくらい、沢山の違う世界を見せてくれた。お互いに支えて、救って、励まして。それでもきっとそれぞれ一部の顔しか知らないまま。
今日という日を少しでも忘れたくなくて、でもすぐに見えるところに置いてはいけないから、ここに残します。忘れたくない。
生きている間にもう一度だけ会えますように。
貯金が趣味のしみったれたやつだと
うんち