2017-08-14

詠唱時代魔法少女について

かつて、いろんな作品にあらわれる魔法少女あるいは変身少女の類は、比較的長い時間をかけて変身していた。

特定の掛け声の発生のもと身体が光輝に包まれ、一瞬身体さらけ出す。昔のお宅はここに興奮したのだという。

これは、魔法少女のグッズ販売という商業主義への兼ね合いのもと、20世紀後半から21世紀初頭にかけての常套表現として、当時人口膾炙していた。

こうした風潮を自覚的に打破したのが、オベリスク護国寺という制作会社にいた田町ボラギノール監督である

氏の壮年期の作品魔法少女平塚ハル』では、主人公平塚らいてうが、裏切り者転向者を誅殺する場面がある。

裏切り者アジトで二人きり。コーヒーを飲みながら他愛のない会話。

一瞬にして平塚ハルは変身し、魔法少女がよく持っている戦術ロッド相手にたたきつける。

相手も隠し持っていたグロックハルに向けようとするが、魔法少女の魔術的スピードにはかなわなかった。

共産主義女性解放運動との兼ね合い、共産主義者転向とをからめた悲しい裏切りの誅殺シーンである

魔法少女平塚ハル』の興行的な成功もあって、次第に無詠唱で変身する魔法少女が増えるようになった。

増田諸賢もご存知の通り、2050年代では、場面の切り替わりや、一瞬柱や扉に隠れた間に変身し、急襲する魔法少女が当たり前になっている。

こうした表現の変化にどのような意義があるだろうか。

一つは、詠唱変身時代の不自然時間超過を回避することができる。

21世紀においてもさんざん議論されたことだが、なぜ敵は魔法少女が変身中に攻撃しないのか。

当時の魔法少女モノは、この問いに対する有機的な答えを用意することが、ほとんどできなかった。

田町ボラギノールはこの問題を鮮やかに解決する。すぐ変身しちゃえばよかったのだ。


二つ目は、表現の幅が広がるのだ。

詠唱変身時代から風潮のあった、かわいらしい魔法少女シリアスな展開に巻き込まれる、という物語構造がある。

ここでは、華やかな詠唱変身は、作風に全くそぐわなかった。誰が裏切り、誰が殺されるのか? そんな作風の中で、かわいらしく時間をかけて変身するのは文脈的ではなかった。

から、速攻で変身して速攻で相手攻撃を仕掛けるという無詠唱変身時代魔法少女は、シリアス作風から歓迎された。奇襲を仕掛ける、さまざまな手段アニメ漫画でなされた。

また、魔法少女モノのお約束で、自分魔法少女であることを露見させてはいけない相手がある。

こうした相手に対する、「ばれないようにする表現」も、素早く変身することで色んな可能性を持つことが可能になった。


近年、回顧主義なのか、詠唱変身する魔法少女が再び見られるようになっている。

時代回帰する。だからそうした風潮も肯んぜられよう。

ただし、なぜ詠唱変身から詠唱変身へと至ったのか。どの時期にだれがそうした変化をもたらしたのか。変化した結果、どのような効果をもたらしたのか。

この辺りを整理しないと意義のある詠唱変身魔法少女アニメは生まれないだろう。深い意味での、温故知新が求められている。

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    • 見事に一つも読んだことがない 私の琴線には引っかからないが、平均的はてなーの琴線には引っかかる記事の得意な増田なのだろう

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