butterfly と聞いて木村カエラのそれを想起するか、デジモンアドベンチャーのそれを想起するかによって人類はふたつに分かれるだろう。
先日部活の OB 会で出会った婚活中の女性 A に振られた時にも私の心には、デジモンアドベンチャーに習った勇気の心が灯っていた。
(そうだ!俺も婚活をすればいいんだ!)
振られたあと、電車に揺られている中でこれからどうしようかなーと考えた時に思い付いた。
意味が分からないだろうが、俺にも意味が分からない。事実、結婚願望はそれほどない。あと五年くらいは出来ればしたくない。
A となら今すぐにでも結婚したいところだが、一般論で結婚がしたい訳ではない。給与的にも正直無理だ。手取りこんなんで養うとかアホかよって思う。
ただ思い付いてしまったのだ。思い付いてしまったなら走り出さねばならない。
とりあえず婚活とは何をすればいいのか、それを調べ始めた。
「あの?質問いいっすか?」
A は確か五歳年上である。
体育会の無駄な上下関係のせいで距離感が可笑しいが気にしないで頂きたい。ちなみに双方アラサーである。
五歳の年齢差とアラサーという情報で年齢は絞れたハズだ。未だに体育会的感覚を引き摺っている俺を笑ってほしい。
一応何度かデートをした仲である。彼女がこの時どう思ったかはわからないが、おそらく婚活の方法を聞かれるとは思わなかったであろう。
「いいよー」
軽い。さすが人生の先輩だ。くぐり抜けてきた戦場の数が違いすぎる。
「婚活ってどうやるんすか?」
すぐに俺は聞いた。
「結婚願望ある人と会うだけだよー」
なんだその伸ばし棒。その辺りが好きだ。
Aはどうやってやっているんですか?とは聞けずに適当な会話を酌み交わした。
そして「あなたはお姫様ってより小人なんだよね」と言ってきた。
なぜ姫?なぜあなたが王子様?俺の方が男なんだけど。いやその辺が好きなんだけれども。
ただ願うのは、その返信に対して長文の謎メールを送ったあの最後の瞬間の時間を消し飛ばす手法が科学の発展によって発見されることだ。
以上の経緯で俺は某婚活サイトに登録することになった。事実は小説よりも奇なりである。
そういえば、A は俺を振ったあとに「あなたは妥協するには素晴らしい物件だと思う」と述べていた。
物件という言い方を本当にするんだなぁとか、なら妥協しろよとか思ったことは言うまでもない。
確かに月並な収入はあるから婚活市場に出ても、神の見えざる手に殺されることはないだろう。
ということで某婚活サイトに「女性」で登録したアタシにいくつかのメッセージが来た。
写真も貼っていなし、プロフィールなんて穴だらけだし、紹介文に至っては例文のコピーアンドペーストである。
にも関らず、メッセージが来た。年齢を23歳にした効果か?それとも全部 BOT か?
とりあえずいくつかのメッセージを呼んでみた。
長い。
長過ぎる。そして返信のしようがない。
こんな長いメッセージに返信する奴なんているのか?
アホなのか?
本気だとしたらアホとしか言いようがないし、例え詐欺とかヤリ目だとしてもアホとしか言いようがない。