2015-09-12

農村部での水害避難の難しさについて

農村部での水害避難の難しさについて

以下、長文になります。要するに、今回の鬼怒川水害で「もっと早く避難しておけばよかったのに」「行政もっと早く避難指示を出せばよかったのに」と感じた方々に「それはそうなのですが、農村部での水害避難には都市部にはない難しさがあります」と説明するものです。

これらの問題が解決され、農村部でも円滑な避難安全の確保がなされることを願っております

水害での避難について。

水害が発生した、あるいは発生が危惧される場合には、避難重要である

タイミング

②行き先

交通手段

このすべてが適切でなければ、十分な避難はできないだろう。

多くの人に注目されているのは①だと思う。「もっと早く避難すべき」「行政は早く避難指示を出すべき」といった指摘だ。

確かに、タイミング重要である。だが、問題はそれだけではないのではないか。避難先ごとに、行き先と交通手段観点から問題を考えていきたい。

1.近隣への避難

避難するとして、どこへ避難するのか。

まず、地域の中で比較安全場所避難することが考えられる。例えば、公民館学校である。水害の場合津波と異なり水の高さはそれほどでもない場合が多い。今回の水害でも、民家の2階には水が届かないケースが多かったようだ。そこで、できれば3階以上の高さがあり、かつ流される心配のない鉄筋の建物避難することが有効であると考えられる。

だが、ここには問題がある。鉄筋の建物がない地域が多いのである

都市部であれば、鉄筋の建物はいくらでもある。だが、農村部では、集落の中に一つも鉄筋の建物がない、ということも多い。あるいは、小学校の学区(あるいは、徒歩30分~1時間程度の範囲)に鉄筋の建物は数えるほどしかない、という地域もざらにある。そういった地域で、数少ない鉄筋の建物にたどり着くことができるのか。あるいは、避難した住民全員を2階ないし3階以上に収容することができるのか。さらに言えば、数少ない鉄筋の建物が川の近くなど水害での危険が大きい場所に集中していた場合、どうすればいいのだろうか。

さらに、そうした避難先へどのように移動するかという問題がある。特に夜、雨の中を数十分かけて徒歩で移動することには危険が伴う。また、そのような負担がある場合には住民の抵抗が強くなり、避難行動をとらない人が増えることが想定される。おそらく多くの人は自家用車で移動することになるが、渋滞が発生する恐れがある。また、自家用車を持たない家庭や、自家用車運転免許を持つ人がたまたま家にいない家庭に対して、どのように交通手段提供するかという問題がある。

2.他の地域への避難

次に、同じ自治体の中で別の地域避難することが考えられる。例えば、隣の校区にある学校である。これならば、比較的短い時間避難できる。

しかし、ここにも問題がある。

第一に交通手段問題。近隣への避難以上に距離があり、異動に時間がかかる。徒歩での避難さらに困難になる。いきおい自家用車を使うことになるが、渋滞自家用車を持たない家庭への対策さらに大きな問題となる。特に他の地域への移動に使える道路が少ない場合、川を渡るための橋が少ない場合などには、渋滞リスクは跳ね上がる。

第二に行き先の認知問題。同じ自治体の中であっても、校区が異なったり、川や山を挟んでいたり、あるいは平成の大合併まで別の自治体であったりした場合交流が乏しいことが考えられる。その場合、「どこへ行けばいいのか分からない」「目的地までの道順が分からない」という人が相当数出ることが想定できる。知名度が高い施設住民が集中すれば、さら渋滞を引き起こすことになる。第三に収容力の問題特に安全避難先が限られている場合、ただでさえその地域住民避難してきている中に、別の地域住民を受け入れることができるのか。あるいは、知名度が高い施設住民が集中すれば、さら収容力の問題が大きくなる。

3.広域避難

最後に、別の自治体比較的遠い地域避難することが考えられる。

この場合時間がかかることに加え、交通手段問題が大きい。数千人、あるいは1万人以上の住民自家用車を利用して避難を試みれば、大規模な渋滞が発生する可能性が非常に高い。特に自治体や山や川をまたぐ場合、利用できる道路が少ないことも多いのではないか。水害とは異なるが東日本大震災でも、自家用車での避難の途中に身動きが取れなくなり、津波にのまれた人も多かったという。

渋滞を避けるためには、鉄道路線バスなどの公共交通機関が正常に機能しているうちに避難を始めるか、貸切バス等の大型バスを大量に動員することが考えられる。しかし、そもそも鉄道路線バス存在しない、あるいは存在したとしても輸送力が大きくない地域も多い。大型バスを集めることが現実的だろうが、かなり早い段階で手配を始める必要があり、費用もかかることが想定される。

では、どうすればよいのだろうか。

凡庸結論になるが、「前もって想定し、対策を頭に入れておく」ことが重要ではないかと考える。

住民被害を想定し、いざという時にどこへ避難するか、どのように避難するかを考えておく。あるいは、行政バス会社などの企業連携し、避難計画を立てておく。

そうして地域全体を巻き込んだ対策を立てなければ、同様の問題が発生する可能性は高いのではないだろうか。

  • 低能 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E5%B7%BB%E5%B8%82%E7%AB%8B%E5%A4%A7%E5%B7%9D%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E6%A0%A1   高脳 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%A5%E6%B3%A2%E3%81%A6%E3%82%93%E3%81%A7%E3%82%93%E3%81%93

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