2014-05-06

人権」問題のグローバル化はすでに終わっている

時事ドットコムEU日本に「人権条項」要求侵害なら経済連携協定停止」

http://b.hatena.ne.jp/entry/www.jiji.com/jc/zc?k=201405/2014050500353&g=pol

を見て、「ヨーロッパ人権基準を振りかざすのか」「内政干渉だ」「人権経済に絡める違和感」…といった感想が多く見られるが、そういう人は、「人権」に関する国際的規定の一つの形が既に成立していることを余りご存じないのだろう。

ISOを御存知か。というか、多くの人は御存知だろう。ネジ1本から工場システム全体まで、その国際的な規格だ。ISOの規格に沿わないネジを作っても外国に輸出が難しいように、ISOの規格を取らないと、たとえば海外企業との取引でハンデがある。まあ、せいぜい「ハンデ」なんだけども。日本はことにISO好きすぎる位だしね。そんなに大げさに考えることも無いんだけど。ただ、自分が今後会社の中で海外製品発注する際、そういう規格で注文したり、そういう規格の認証を受けている会社に注文するというのは、いろいろと安心感があったり、便利なことはよく分かるだろう。そのための規格だ。

そのISOの中でもISO26000というのは、企業の「社会的責任CSR)」を定めた規格で、かなり適用範囲が広い。その中に、企業労働慣行環境への配慮などと並び、『人権への配慮』についても細かい規格が定められているんだ。たとえば従業員子どもを預けるための施設が近くにあるか、とか。ブラック企業と取引してないか、とか。ちなみに、その調査は、その会社の子請け・孫請けにも及ぶ、ということも規定されている。

分かるとおり、これは今後予想される途上国との取引に、一定の型をはめるために作られたもので、見ようによっては相当政治的なシロモノでもある。だが、正論でもある。ダンピングを行う会社市場経済の敵なのだから、不当な環境従業員酷使することで利益を得ている会社労働市場におけるダンピングを強いているわけで、やはり市場経済の敵だ。従業員酷使することで、つまりダンピングから利益を得ている会社と取引する会社は、当然市場経済の敵だ。筋が通っている。また、人権配慮しない社会の中にある会社は、当然ながら人権配慮する社会会社より、社会的責任果たしていないことは明白であり、これもダンピングから不当な利益を得ているということになる。企業社会的責任に関する規格、というのは、極論すればそこまで及ぶ。

大げさな話をしているように思うかもしれないが、興味のある人はISO26000で調べてみてほしい。すでに、この規格は完成して、数年前に発行された。

今回の件もその一端であり、いくら「日本が猛反発」しても全く覆る余地のない話なんだ。ハッキリ言って、反発するタイミングが一手も二手も遅い。つーか、完全にズレており、今回の問題についてのポイントを捉え損ねている。いくらゴネたところで、「時代遅れの国」と見なされ市場から排除されるだけであり、さっさと対応を考えるしかないのは明白なんだよね。これを飲むためには、何についてどれだけの議論を進めることが必要か、どんな準備をすべきか。少なくとも、「反対」などという悪手を打って、正当な対応が遅れれば遅れるほど、ビジネスチャンスもまたどんどんと失われていくということくらいは理解しておくべき。

「うちの会社国内取引だけですしwwwヨーロッパ関係ないしwwww」と笑ってるブラック企業の皆さん、子請け孫請けにも適用されるということは、おたくの取引先、さらにその先に、ヨーロッパと取引してる会社があればアウトだってことを理解しておく方がいいよ。この話に全く関わりのない日本会社は、多分ないんじゃないかな?

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん