2011-07-18

ある恋人の回想

数年前、恋人と別れた。

破局の理由は、恋人の持つ不幸を受け入れられなかったことだろうか。

とどのつまり人生幸せに送りたいという増田ささやかで、かつ残酷な思いが、

重い過去に引きずられた恋人を余計に苦しめたという事実だけを残したように思う。

自分の気持ちの整理と懺悔のため、自分語りチラ裏を始めます

彼は、とても自己尊厳欲求の高い親に育てられた。

親御さんは優越感に浸る手段として、息子ーーつまり彼を周囲に自慢することを選んだ。

学業成績や習い事の発表会で不備があれば、「一家の恥さらし」には

待っているはずの夕飯がなかったり、体罰が待っていたりした。

彼はそんな親元を離れるため東京大学へ進学し、卒業後は都内に勤めた。

増田との出会い大学時代だったが、付き合うに至ったのは卒業後。

大学卒業後、数年ぶりに連絡をもらい、久々に顔を合わせると、

端正な顔立ちと明るい性格は、記憶の中の彼と全くと変わりがなかった。

青春時代に秘めていた淡い気持ちをもう一度胸に、昔話やデートを重ねるうち、

東京を離れた増田と彼は、いわゆる遠距離恋愛を始めた。

付き合い始めて一年、順調な交際の中で結婚生活妄想し始めた幸せ増田のいる一方、

彼は体調を崩し、会社を辞めた。

長い人生なんだから、しばらく心身を休めてまた働けばいい、と増田は気楽に考えていた。

ところが、日に日に体力が落ち、調子の悪い日にはベッドから起きることすら叶わなくなっていった。

彼が不安で眠れない夜には、終わりの見えない電話に付き合った。

話題が目まぐるしく変わる受話器の隣で、窓に白み始めた空を映すころ、会話はいつも途絶えた。

毎晩の電話の中で、大学時代から精神に疾病があったこと、それが親の虐待に起因していることを聞いた。

直に治るだろうから支えよう、というお気楽増田の考えはしばらく変わらなかった。

調子が良くなった彼は再就職をした。

彼の趣味そのもの仕事となったため、内定獲得に彼は文字どおり跳ねて喜んでいた。

宿直あり•変則シフト制の新しい仕事は、増田には、彼の体力的な面、

土日休み増田とのスケジュール面で不安があり、素直に喜べなかった。

夜勤が入り始めしばらくすると、連絡は途絶えがちになった。

毎日あった連絡は、二日に一回、一週間、一ヶ月に一回となった。

夜勤での体力的な消耗と、持ち前の生真面目さで仕事に苦しんでいるんだろうと思った。

初夏の暑いある日、お馬鹿な増田夏風邪を引く。一人暮らしで初めての40度近い発熱。

たまたま彼の休日だったか気分転換メールを打つも、案の定、返事はなかった。

翌日、見舞いにきた同僚に感謝する一方で、突然虚しさを覚える増田がいた。

連絡が取れず心が離れつつあるところに、赤の他人からの優しさを覚えた増田から

彼に対する情が消えていったのだ。

同時に、少し苦痛でもあった彼との電話が取れないことに不満を抱いたことに、

自分が多少の共依存に陥っていたことを知り、恐怖を感じた。

やはり会うこともままならなかったため、別れ話はメールで終わった。

別れたい旨を告げると、数日後、あっさり了承の知らせが返ってきた。

彼を見捨ててしまった感がある増田には、別れてからしばらく経ったいまもトゲが残っている。

彼との交際において、どのような選択をすれば後悔せずにすんだのだろうか、

仕事で大変な時期にストレスを与えてしまい、仕事に支障はなかったのか、

自分と付き合っている間、彼はつかの間の幸せを感じられたのだろうか、

恋が冷める前に、彼のいる東京で職を見つければよかったのだろうか、

増田が見捨ててしまった彼には、これから幸せ人生が待っているんだろうか。

心の片隅にある答えの出ない問いと罪悪感がいつ消えるとも知らず、

しばらく増田は、ばく然とした幸せを求めて生きていくんだと思います

少し尻切れとんぼですが、長文のご高覧ありがとうございました。

  • 別れたい旨を告げると、数日後、あっさり了承の知らせが返ってきた。 そんなに罪悪感とか憶えなくても、向こうは割と大丈夫そうじゃね?

  • こういっちゃキツすぎるかも知れないが、元増田との付き合いが本当に「依存」からくるものなら、立ち直りかけた頃こそまとわりついてきたはず。別れるころには、彼も元増田との関...

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