はてなキーワード: 男装の麗人とは
夕食のあと、すぐに自分の部屋に戻って、例の服を取り出した。僕は固まってしまった。袋から取り出したるはフリフリでフワフワのピンク色した素敵なドレス。お嬢さんは「それを身に着けておいて」と言った。ならば僕はフリフリのドレスを着なければならないのだろう。これは仕事なのか、それともお嬢さんの遊びなのか、いまから何が始まるというのか、というか何の嫌がらせ?
唸る僕。
目の前にはドレス。
悩む僕。
目の前にはドレス。
どれだけそうしていただろうか。物音に顔を上げると、部屋の入り口にタキシード姿のお嬢さんが立っていた。……タキシード? 艶やかな蝶ネクタイが目を引く。長い黒髪が、正面からは短く見えるよう、後ろで括られている。意外にというか、とてもよく似合っている。漫画で描かれるような男装の麗人そのものである。
「なに、まだ着てなかったの」
お嬢さんは顔をしかめて、ずかずかと部屋に入ってくる。ベッドの上に広げられたドレスを手にとって、なかなか良い出来ねと呟き、それから僕の目をじっと覗き込んだ。
「……嫌なの?」
「嫌、というか」
「嫌なんだったら着なくていいわよ?」
「あの、嫌ではないんです、けど」
「けど?」
女物の服なんて着たことないし、これから何があるのかも、なんで女装しなきゃならないのかも分からないし、やっぱり心理的に抵抗があるし、僕には似合わないだろうし、二十歳を超えた男がこんなもの着たって気持ち悪いだけだし、
「あら、似合うと思うけれど」
「おだてても無駄です」
「本心だってば。おばあちゃんの目に狂いはないんだから」
だんだん苛立ってきたのか、お嬢さんがふくれっつらをする。一介の運転手にこれ以上の反抗は許されないだろう。……覚悟を決めるしかないのか。
「着方がわからないんだったら手伝いを寄越すわよ」
「お願いします」
「お化粧もしないとね」
「もう好きにしてください」
なんだか彼女が楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。
いったい何が起こっているんだ?
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当然のように女装一択。
誰か続きを書いてくれ。