2022-09-05

規格外野菜とフードロス、農家が思うところ

https://twitter.com/ShinShinohara/status/1566210232833159168

規格外」というが、実は全国で統一された規格というものはない。

おそらく、この人が言っているのは農協が定める規格だと思う。

まず農協商売とはどういうものか。

農協農家から野菜買取りをしているのではない、農家農協販売委託しているという契約形態である

農協は各県の全農を通して販売先を決め、市場を通して販売する。農協はそこから3%程度の販売手数料を取るという仕組みである

手数料商売である農協は少しでも販売額を上げたいので、それぞれが独自に規格を定めて、有利販売できるように努力している。

その有利販売のための手段が規格である

農家が想定する販売先はスーパーであるが、スーパーはそれぞれ個性があり、地域にも売れる商品の特徴があるので、

そんなスーパー複数相手にするとなると、どうしても最大公約数的な規格にならざるを得ない。

規格とは具体的にはどのようなものかというと、

例えば当地ではズッキーニ生産で全国有であるが、農協の規格は2kg詰で18種類もある。

最長で20cm最小で16cm、太さに規定はないが、満箱詰めで重量は箱込みで2100g以上、箱の両端のみ上下をひっくり返してよい。

そうすると入り数が8本〜16本にわかれるので、それぞれが良品と傷物に分けられる。

なお、12本入が最も高値取引される。

傷は少しでもあれば格落ちで、最大で果実の1/3まで、地面や草の陰でついた色むらは格落ちとなる。色が薄いのも格落ち。

曲がりは机に置いて隙間が1cmまでが良品、3cmまでは格落ち、それ以上は返品となる。

あと、ひょうたんのようなくびれ果や、未受粉による先細果、深い傷などは返品である

返品とは農協での検査の段階で弾かれ、箱ごと生産者の元に帰ってくる。

1本でも返品レベルが入っていれば、箱ごと返品となる。

この返品こそが本当の「規格外である

気づいてほしいのだが、実は傷物も、ある意味では規格品であるということ。

傷の度合いや形はしっかり決まっているので、これを規格と言わずなんと言うのか。

当地のようにここまで規格を細かく分けることに意味があるかは分からない、それは農協が決めることだからだ。

我々農家委託をしているわけで、販売方法について文句を言う立場にない。

規格については生産部会農協合意しているわけで、変更したいのであれば部会を通して交渉していくことになる。

市場には個人で持ち込むことも可能である。この場合、規格は自分で定めることができる。

もちろん、その規格がどう評価されるかは別問題であり、悪いものは相応の値段しかつかない。当然のことだ。

販売先によっても違う、農協場合ミニトマトのヘタなしは規格外であり返品となるが、

個人販売先では2割程度までOKとしてもらっている。

ならば、生産者として規格外と呼ぶべきは何かというと、

消費者や加工業者の手に届く段階で腐ってしまう、食用に耐えられないものだと思う。

例えば、トマトは傷があっても規格品であるが、割れているものは1日でカビてしまうので生鮮流通はできない。

しかし凍らせてしまえば、加工用として保存可能であるジュースにするのであれば問題ない。

規格外というのは、売り先や売り方によって変わってしまうのである

時々、業者規格外が欲しいという人たちがくる。

腐ったものが欲しいということはまずないので、格落ちを安く欲しいということだろう。

しかしこういう人は、ほとんどの販売農家に嫌われ、相手にされない。

そもそも我々は格落ちや規格外を作りたいわけではない。いきなり格落ちが欲しいというのはものすごく失礼なことなである

条件が揃えば規格外なんて全然出ないこともある。その時、良品を良品の値段で必要量買ってくれますか?と問えば、

大抵の人はもう二度とこない。

こちらもこんな業者相手にするのはごめんこうむる。

さて、こんな規格外という消費に耐えないような野菜は、

当然だが収穫段階で見分けて廃棄すべきである

段ボールだって一枚100円くらいする。そんなものに詰めて運賃かけて送って、消費者冷蔵庫に到達する前に腐るのでは、

フードロスというより、もはやあらゆる点で無駄しかない

資源の浪費、エネルギーの浪費、人手の浪費。クレームに赤伝と事務的無駄。そして誰も幸せになれない。

箱に入らない農作物雑草と変わらない。

畑で廃棄すること、選別でいらないものを廃棄することに罪悪感は一切感じない。

何せ、太陽エネルギー無料で手に入るのだ。

フードロスとは、食料を無駄にすることではなく、きちんと出荷された規格品を廃棄することである

品目によってはどう頑張っても格落ちの傷ものは出る時がある。

どうやってもダメな時はダメ。それを覚悟の上で農業をやっている。

それでもやっぱり、格落ち品を出荷するのは気持ち的に落ちるし、悔しいしみじめだ。

それでも、そんな野菜でも買ってくれるなら、僕は出荷します。

もちろん、パートさんの給料とか運賃とか出してなんとか黒字ラインを保てるならだけど。

格落ち品しか出ない時なんて、終わってみれば一時的なことだったと思うし、

そんなもの売るななんて思わない。良品の箱に格落ち混ぜてくるようなやつは許せないけど。

誰でも良い時もあれば悪い時もある、お互い様ですよ。

なお、キャベツレタスが畑で潰されているのがフードロスと勘違いされて敵視されているが、

あれは、農家判断で行うものではない。

緊急需給調整事業といい、国の事業である補助金も出る。

僕は葉物(レタスキャベツ白菜など)を作っていないので詳細は知らないが、

地方農協レベルではなくもっと上位で判断されているものだと思う。

露地野菜特に気候が与える影響が大きく、生産量も価格も大きく変動するがなければ生活に大きな影響が出るものなので、

安定供給のために産地に補助金を出すことで生産量を確保している、というのが制度趣旨である理解している。

野菜に関しては重要品目として20種類ほど指定されており、

さらに、各品目ごとに重要産地が指定されており、その地域には生産振興や価格低迷に対して交付金が出ていたかと思う。

食料生産に対して保護をすることは悪いことではないと思うのだが、どうだろうか。

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