2020-08-08

アルバイト退職した。

大学進学を機に上京し、勉強部活の傍ら、生活趣味に遣うお金のために様々なアルバイトをしていたが、どれも長続きしなかった。

一昨年のこの頃は飲食店に勤めていたが、ある日バイト中に社員に手を上げられ、そのまま店を辞めてしまった。

勢いでアルバイトを辞めてしまったが、働かないと生活が苦しくなる。

飲食以外でアルバイトを探していたところ、隣町の小さな本屋求人を見つけた。

時給は低かったものの、仕事が暇そうだったのととても雰囲気がよかった事もあり、そのまま応募した。

無事に採用され、先輩からレジ周りの仕事から教えてもらうことになったのだが、その先輩は高校生だった。

名前、似てますね。」

「私もそう思いました。」

私の名前増田、先輩の名前曽田だったので同じことを考えていたが、先に言われてしまった。

これが曽田さんとの初めての会話だった。

曽田さんは私より年下なのにとてもしっかりしていて、明るくて芯のある人だった。

キャラクターで例を挙げるなら夜は短し歩けよ乙女黒髪乙女が近いかもしれない。

シフト曜日固定なので、毎週曽田さんと同じ時間バイトに入っていた。

その頃私は大学から課される大量の実験レポート忙殺され、心身ともに疲れ切っていたが、

曽田さんのしゃきっとした態度を見るだけで疲れなど忘れ、私はだんだん曽田さんを好きになっていた。

私と曽田さんは、アルバイト数人でご飯を食べたり遊んだりする仲ではあったが、

私が二人で食事に行こうと曽田さんを誘っても、曽田さんは決してその誘いに乗ることはなかった。

食事の誘いには乗らなかったが、曽田さんに勧められた飲食店ご飯を食べた感想を伝えると、

「どうして私を誘ってくれなかったんですか」と言われることもあり、私はカンチガイしていた。

募る思いだけが日に日に増していった。

曽田さんは高校卒業して近隣の大学に進学したため、去年の四月以降も曽田さんとのシフトは続いていた。

そんな関係が続くうちにアルバイトを始めてから一年が過ぎた。

一年、いい区切りだと思った。

私は曽田さんに告白した。

今まではバイト終わりに「お腹空いたね、ご飯行かない?」と食事に誘っては断られてを繰り返していたため、

曽田さんは私に気は無いんだろうなとは薄々気付いていた。

食事は断られるが、仲は良かったので今の関係のままでもいいかなと考えもしたが、

どうしても諦めきれず、関係が壊れることも覚悟してその日は「君のことが好きだから、今度一緒に食事しませんか。」と気合を込めて誘った。

好きな人いるから、行けません。」

むなしくもまた、断られた。

曽田さんは幼馴染の浪人生が好きということと、勉強邪魔をしないため、浪人生活が終わるまでは告白しないと決め、

もどかしい思いをしていることを私に教えてくれた。

完全敗北を喫した私は、しばらくの間は曽田さんとぎくしゃくしていた。

曽田さんを諦められない気持ちもあったが、曽田さんは曽田さんでバイト中に好きな人の話を私にしてくるため、

さすがにこれ以上曽田さんのことを追いかけていても曽田さんの迷惑になるなと思い、身を引くことにした。

去年の暮に、私も私で別の人から告白され、付き合うことにした。

曽田さんへの思いを吹っ切るためだったのかもしれない。

そんな気持ちで付き合い始めたのは恋人に失礼だったなと今は反省している

曽田さんとは相変わらず同じシフトだったが、その頃には曽田さんともだいぶ打ち解けていた。

「私、振られちゃいました。」

曽田さんが私にそう告げたのは今年の三月だった。

曽田さんはそれから幼馴染の話をしなくなり、私と私の恋人の話を聞くことが多くなった。

私と恋人との関係は順調だったが、曽田さんのことを吹っ切れたかというとそうでもなかった。

告白する前より仲が良くなったかもしれない。

この頃から曽田さんはバイト後にバイク帰宅する私を見送ってくれるようになり、

増田さんが恋人と別れたら後ろに私を乗せてくださいね。」なんて言われたりもした。

バイト後に曽田さんが私を食事に誘うこともあったが、断っていた。

曽田さんを吹っ切れなかったが、恋人に対して失礼な事をしたくなかった。

新型コロナ蔓延し始め、世間でも騒がれ始めた頃、本屋も一時休業することになった。

「お互い元気なままで再会しような。」

休業前の最後バイト曽田さんとそんなやり取りをした後に「次に会うときバイト後にラーメン食べに行きましょう。」と約束した。

バイト後のラーメンとはいえ恋人以外の異性と二人で食事に行くことは恋人申し訳なかったため、恋人にはちゃんと報告した。

休業が明け、久しぶりに会った曽田さんとバイト後にラーメンを食べているとき、月日の流れを感じた。

曽田さんと二人で食事をしたのはそれが最初最後だった。

「八月で閉店します。」

一時休業が明けて少し経った頃、店長にそう告げられた。

経営不振だそうだ。

曽田さんとの関係が終わる。

その日はあまり眠れなかった。

恋人との関係も続いているが、曽田さんと会えなくなることを考えるととても辛かった。

恋人と別れて曽田さんにもう一度告白することを考える自分もいたが、

恋人に対してなんて酷いことをしようとしているのだろうという思いの方が強かった。

最後バイトでは「振られた後もずっと曽田さんのことが好きだった、今までありがとう。」なんて伝えようかなと考えていた。

そして先日、本屋も閉店し、曽田さんとの最後バイトを終えた。

退職手続きを済ませ、本が無くなった本屋簡単打ち上げをした。

その日は徒歩だったので、曽田さんと並んで帰っていた。

とくにこれといった話はしなかったが、曽田さんに別れ際に「増田さんの恋人よろしく言っておいて下さい」と言われた。

その言葉を受けて何も言えなくなってしまい、別れた後は放心状態帰宅した。

全部見透かされていた。

曽田さんは私の好意に気付いており、曽田さんも少しは私のことが好きだったのかもしれない。

私と私の恋人関係のためにも、私に「曽田さんが好きだ。」と言わせなかったのかな、なんて考えたりもする。

どこまでが合っているのかは分からない。


これから曽田さんと会う機会もなくなり、曽田さんへの思いは日に日に小さくなっていくんだろうけど、

曽田さんの気持ちを汲むためにも恋人のためにもそれが最良なのかなと考えている。

  • これは汚ェ花火

  • いい話なんだけど肝心の曽田さんの言動がネンネそのもので全然魅力がない 齢配り的におかしくはないんだけど…

  • >どこまでが合ってるのかわからない いや、こっちのせりふだよ!

  • 現実世界では息をするように二股・三股かけるヤリチンが総どりする。 増田彼女も曽田さんも寝取られて終了。

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