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はてなキーワード: 外套とは

2011-11-18

別れ 井上靖

河北省の京漢線・元氏駅の土間で、私はアンペラの上に仰向けに倒れていた。銃一挺を抱くように持ち、外套を頭から被って、眼を瞑っていた。

この何日か、衝心性の脚気の発作が烈しくなったため、今朝、雪の中を南下、行軍して行く部隊と別れて、この元氏駅で北上して行く列車を待っている。列車に石家庄駅まで運んで貰い、そこで下車、最近設けられたと聞く石家庄野病院入院する。

──これが自分が選んだ自分を生かす、ただ一つの道であった。これ以外、生き得る方法はなさそうであった。部隊の軍医も、看護兵も、また同じ意見であった。

私が仰向けに倒れている元氏駅には、中年歩兵上等兵駅長として、これまた一人、アンペラの上に胡坐をかいたり、そこらを歩き廻ったりしている。駅長と言っても、他に駅員が居るわけではなく、ただ一人、駅に配されている。

一日に三、四本入って来る軍用列車を迎え、送り、それをどこかに、電話で連絡するだけの仕事を受持っているようであった。

夕方、彼は病兵の私のために夕食の支度をして、飯盒と罐詰を持って来てくれた。その時、二人は初めて、壊れかかった石炭ストーブに手をかざしながら、言葉らしい言葉を交した。

──夜、七時過ぎには、一応列車は来ないことになっているので、七時になると、俺は俺で、そこらの壕に入る。壕の方が、幾らか寒さは防げる。お前さんも、好きなようにしてくれ。このまま、ここに居たければ、ここに居ればいい。

──ただ、どこへ行ってもいいが、臨時の列車が来ないものでもない。臨時であろうと、なかろうと、上りが来たら、お前さんは、それに乗ることだ。おとなしくしていたら乗れない。しがみついてでも、乗っちまうことだ。

──そうしないで、こんな所でうろうろして居てみろ。お前さんの場合は、いいところ三日で、まあ、お陀仏だな。

そんなことを喋っている時、遠くに銃声が聞えた。

──ああいうのは、大丈夫毎日、今頃になると、撃ってくる!撃たしておけばいい。近寄っては来ない。だが、すっかり昏れてしまうまでは、線路の向うには行かない方がいい!

駅長は言った。

いつも、お前さんはここに一人か、と私が説くと、

──ここに来て、まだ五日ほどだ。咋日までは、自分の隊から離れちまったのが、四、五人、ごろごろしていたが、それぞれ、みんな、昨日のうちに、列車で、前線の己が部隊へと向った。すると、替って、今日はお前さんがやって来た。病人でも、まあ、居ないよりはましだ。

実際に、病人であろうと、なかろうと、居ないよりはましであるに違いない。こんな大平原のただ中の、ちっぽけな駅に、一人で置かれたら、気でも狂う以外、どう仕様もないだろうと思う。

結局、夕近くなると、二人は駅の小さい建物から出て、その横手に掘られてある帯状の、細長い塚の中に入った。かなり深く掘られであるので、待合室に居るより、寒さは多少ましだった。

それに、列車が来れば、すぐその音が響いてくるので、そこから直かに、ホームに上って行けばよかった。

二人は、それぞれ、壕の中に己が寝所を造り、身を横たえて、外套をかぶった。いつか、雪はやんでいる。どれだけの時間が経ったか、知らない。

──おい、起きろ。

その声で眼を覚した。

──夕焼がきれいだ!こんな夕焼は、めったに見られるものではない。こんな所に、ばら撒かれていればこそ、こうしたものにも、お目にかかれるというものだ。まるで、天の火事だ!

私は黙って、夕焼を見ていた。駅長が騒ぐだけあって、西の空は真赤に焼けただれ、それが大きく拡がっていた。確かに、今までに見たことのない、壮大な天の火災であった。今朝、別れた部隊は、どこで、この天空大火災を見ているのであろうか、と思った。

それから、また眠った。

その夜、十一時、北上する臨時の貨物列車が入って来たので、壕を飛び出した。いつからか、また雪が降っている。待ちに待った列車に乗り込もうとしたが、容易なことでは乗り込めなかった。雪をかぶった無蓋貨車で、どの車輌にも、やたらに梱包が積み上げられてあり、何人かの応援でもない限り、そこに身を移すことはできなかった。

駅長はホームを駈け廻り、私を乗り込ませる車輌を物色し、自分も半ば、それに乗り込むようにして、私を引き上げたり、押し上げたりして、どうにか私を、車輌の一つに乗り込ませてくれた。

列車が動き出してから、私は世話になった駅長名前も、所属している部隊名も聞いていないことに気付いた。気付いた時は、もう遅かった。駅長は、長い、これほど長いとは思わなかった、長いホームに一人だけ立って、手を振っていた。“孤影”とは、この時の、彼のために造られた詞であった。私もホームに向って、手を振ったが、私が手を振るのが、駅長の眼に入ったか、どうか。

私は、私の八十年の生涯で、“別れ”なるものを一つ選ぶとすると、昭和十二年十一月の、この元氏駅に於ける、深夜の駅長との別れということになる。私はある時、ある所で、ある人と別れたのである。本当に別れと言える別れを、異国の小さい雪の駅で経験したのである

2011-03-12

都内の自宅で増田見たりツイッター見たりしてぬくぬくしてるけど(回線負荷を考えて流石にニコニコは控えた)、眠るのが怖い。眠ってる間に大きな地震が来たらどうしよう。うちの強度が落ちていて次の地震で倒壊、みたいな事があり得ないとは限らない。そんな確率何億分の一だよ、と思ってる自分もいるけど、それでも不安なものは不安。誰かに安全だよって、何も考えずにぐっすり眠っていいんだよって言って欲しい

身の回り品をまとめて、靴は用意だけして、でも勿論外套は着たまま、もう眠ろう。明日、走り回らないといけないような事が起きるかもしれない。きっと何も起きないのだろうけど。

2010-08-27

発火性粉雪の相対的隠居

自分の内なる精神の中に幾つかの人格があるということは?

例えば尻尾

もし青色の瞳が覗きこんだ黒目にはあなたが。

例えば小指。

気体分子の中から触る衣服の発火現象は?

あたしとあなたのわたしはきみだから。

時計の長針が短針を引き抜く回数は?

細い指の先で触れる頬を貫く感触は?

窓の外に浮かんだ?

モノクロと白黒の違いは?

灰色ポリマーと自立型人間の値段は?

回る世界地球という大地が作られる確率は?

参画の星の下にある植物化石の生える荒涼な地平線。

レースの袖に紐が食い込む外套

灯りだけが付く神社の桟橋。

目の前の壁と後ろの壁に押される猫は?

見ようとする端子と映すカップの紅茶に。

太平と体制の違いに翼のない猪が駆けるこけし。

芥子のペンで鼠を近付ける酸。

箱の中と外の箱の他の猫。

碇が咽び泣く北斗七星

目の前を通過するHDD

アルミホイルで包まれたリンゴの蒲焼。

旅費の他に必要な電源。

ゲームゲームの違いに生まれたゲームは?

紅茶リンゴレモンに浮かぶ茶色の水は?

走る粉雪と溶ける花弁に七色の足が蹴り抜く背中ボタンは?

新緑の生い茂る深海と空を泳ぐ眼球の梱包材を掻き毟る音は?

泣いてる雑誌と笑ってる自分に生まれた冷凍腎臓は?

59 04 23 22 これらの中に隠れた子供は何人?

滴る銅と翡翠の爪から響いた雲の隙間が仲間を呼んだ時間と枠組みは?

縺れる瞳と犬の拳に浮かぶ水泡と破れた河の中腹に生える右眼は?

精神と肉体の間の電子的な制約とハイデッガの利率は三十だから。

太った烏帽子に烏が止まった地球の自転は?

電子レンジで砕けた音質の減少率は?

過疎化した惑星の中心の愛の言葉と柱に刻んだ白いあなたは?

見つけたくても見つかる昆虫は?

狂える落葉と平安の安息とが同定する世界

不揃いな中指が互いに世辞を認める小銭。

化学の履歴と表示される編集画面

戻る芳香と啜る病の鈍痛。

馨しく如何わしく禿あがる空の小指。

箪笥と炊飯の関係性に取れる冊子。

行間と行間に煌めくアスピリンの罪状は?

黒白の球に転がった頭と取れた眼球の相違は?

2009-06-25

雪の進軍 氷を踏んで どれが河やら 道さえ知れず

馬は斃れる 捨ててもおけず ここは何処ぞ 皆敵の国

ままよ大胆 一服やれば 頼み少なや 煙草が二本

 

焼かぬ乾魚に 半煮え飯に なまじ生命の あるそのうちは

こらえ切れない 寒さの焚火 煙いはずだよ 生木が燻る

渋い顔して 功名噺 「粋」というのは 梅干一つ

 

着の身着のまま 気楽な臥所 背嚢枕に 外套かぶりゃ

背の温みで 雪解けかかる 夜具の黍殻 しっぽり濡れて

結びかねたる 露営の夢を 月は冷たく 顔覗き込む

 

命捧げて 出てきた身ゆえ 死ぬる覚悟で 吶喊すれど

武運拙く 討死にせねば 義理にからめた 恤兵真綿

そろりそろりと 頚締めかかる どうせ生かして 還さぬ積り

2009-02-21

ブンガク格付け

超名作

ドンキホーテ 戦争と平和 神曲ファウスト

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名作

魔の山 レ・ミゼラブル デイヴィッド・コパフィールド 

人間の絆  白鯨 カラマーゾフの兄弟 重力の虹

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良作

回帰線 赤と黒 阿Q正伝 ボヴァリー夫人 失われた時を求めて 1984年 キャッチ22

ゴリオ爺さん ガラス玉演戯 ユリシーズ 響きと怒り 城 アンダーワールド 異邦人

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佳作

怒りのぶどう 大地  世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

グレート・ギャッツビー 明暗 老人と海 夜の果てへの旅 スローターハウス5

感情教育 ハムレット 失楽園 オデュッセイア モンテ・クリスト伯

クオ・ワディス 大使たち イワンデニーソヴィチの一日 ライ麦畑でつかまえて

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ラノベ

豊饒の海 ティファニーで朝食を レベッカ 万延元年のフットボール

決壊 初恋 アルジャーノンに花束を グランド・フィナーレ 椿姫

見えない都市 百年の孤独 オネーギン オブローモフ 外套 暗夜行路

ムーンパレス 嵐が丘 ジェーン・エア 伊豆の踊り子 涼宮ハルヒの憂鬱

キノの旅 ダ・ヴィンチ・コード

2008-10-16

http://anond.hatelabo.jp/20081015110318

自分の中では「あり」な順に

背広>襟巻き>>えもん掛け>コール天>>外套

かな

外套」は同音異義語の多さで損をしてるね

2008-10-15

http://anond.hatelabo.jp/20081015103639

スーツを「背広」、マフラーを「襟巻き」、コートを「外套」と言うのはどうですか。

あと「えもん掛け」も

2008-06-18

本何時間もぶっ続けで読める人すげぇ!

僕なんかは精々30分くらいで集中力が途切れちゃって違うことをしたくなる。

だけど、すごい人は「小説は一気に読む方が面白いぜ」とか「確かに疲れるけど次が読みたくて仕方ないんだよ!」とか平気で言っちゃう。

確かに僕もそれについては結構なことだと思うんですけど、無理なんですよ。

図書館に篭もって文学を読みふけるのとか憧れるんですけど、30分ごとに散歩したりコーヒー飲まないとやってられない。

それを何度続けてたとしても、その上一日あたりの読書許容量が決まっているみたいで、結局一冊の文学を一日で読み切るってことを僕はやったことがなく、僕には不可能であると感じているわけです。

でも僕も「一気に読みました」的体験してみたい!

ドストエフスキーの悪霊は無理でも、ゴーゴリ外套くらいならあと少しでいけそうな気がする!

頑張り続けたいです。

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