はてなキーワード: キミがいるとは
「フラッガー?」
そのフラッガーとやらは様々な世界を行き来して、幾度も次元を分裂させているらしい。
次元を分裂させる犯罪者は他にもいるが、フラッガーはその元祖なんだとか。
「フィクションとかで、特定の因果律を“フラグ”っていうのは聞いたことあるだろ?」
「ああ、“死亡フラグ”とかってよく言われてるな」
「あれは架空の概念じゃないんだよ。実在していることが分かったんだ」
遥か未来では次元を行き来できるようになり、その過程で“フラグ”という概念も発明された。
そのフラグを使うことで、次元に大きく干渉することが可能になったらしい。
「つまり、そのフラッガーって奴は独学でフラグを発見して、自在に干渉する方法を見つけたと」
「というより、フラグを最初に見つけたのがフラッガーなんだよ。発明したのもね」
フラッガーは元の世界では、かなり著名なエンジニアだったらしい。
特に次元の行き来については、宇宙全体を見回してもトップクラスなんだとか。
「だから今まで捕まえることはおろか、足取りを掴むことすら困難だったんだ。けれど、今そのチャンスを“ボクたち”は与えられた!」
“ボクたち”っていうのが、すごく引っかかる。
このままフラッガー探しに突入しそうな勢いだ。
「もう、ここにはいないんだろう? 今さら追いかけて捕まえるのは無理じゃないか?」
「世界が分裂を始めた時、ボクはあらかじめ世界全体に防護バリアを張っておいたんだ。分裂した世界が、すぐに消滅してしまわないようにね」
防護バリアは内外問わず、ちょっとそっとのことでは破れないようになっているらしい。
そしてバリアは世界が分裂した直前、つまりフラッガーが犯行に及んでいる最中に張られた。
ということは、まだフラッガーはこの世界のどこかにいるってことだ。
「フラッガーがまだいるのは分かったが、この世界も宇宙より狭いってだけで、俺からすれば十分広いんだぞ」
「もちろんアテはある。さっきも言ったように、分裂世界では次元が不安定だから生身での行き来は出来ない。だからフラッガーも専用の船を持っているはずなんだ」
その船とやらは、持っている探査機を使えば、間もなく見つかるものだという。
「じゃあ俺はこれで……」
いよいよマズい展開になってきたな。
「悪いけど、もう少しだけ力を貸してくれ」
扉に手をかけるが、うんともすんともいわない。
「俺の出る幕じゃないだろ」
「フラッガーは次元移動のスペシャリストだ。追い詰められた時、どんな奥の手を使ってくるか分からない。万全を期すなら、次元の影響を受けにくいキミがいるんだ」
その万全を期したとき、俺の身の安全は誰が期してくれるんだよ。
抗議も空しく、船はゆっくりと移動を始めた。