2020-04-10

[] #84-10幸せ世界

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「ほら! 起きて! しっかり!」

朧げだが、既視感のある声が聴こえる。

俺はゆっくりと瞼を開いた。

「あ、やっと起きた。あの後キミはぐったりしちゃってね。ボクの船まで運んで、休ませていたのさ」

どうやら、また気絶してしまったようだ。

短期間で二度も気絶って、人生でそう体験することじゃないな。

「……いつつ」

全身の倦怠感と共に、頬に僅かな痛みを感じる。

俺を起こそうと、ガイドがまたも引っ叩いたのだろう。

短期間で二度もぶたれるとは、これも人生初だな。

全くもって嬉しくないが。

大丈夫? メディカルキットで見る限りは大きな創傷はないようだけど……」

現状を把握しきれていない状態だったが、俺はとりあえずガイドに拳骨をお見舞いした。

それだけは真っ先にやっておこうと、潜在意識が働いたのだと思う。

「あたた……ひとまず元気そうなのは分かったよ」

こんな漫然と暴力を振るったのは初めてだったが後悔はしていない。

今回の出来事は大局的に見れば、こいつが原因じゃないのは分かっている。

それでも俺に対して、払うべきツケがないといったら嘘になるだろう。

なし崩し的に酷い目に合った身から言わせれば、むしろ拳骨一発はリーズナブルだとすら思っている。

「で、今どういう状況なんだ」

「おかげで次元の再結合は果たされた。後は因果力によって、裂かれた箇所は自然と修復されるだろう」

「そりゃあ、何よりだな」

やれやれ、これでようやく帰れる。

時間は大したことないのに、フルタイムより疲れた

「ほら、モニターを見てみなよ。次元の縫い目が出来て、徐々に接合されて、跡すら綺麗に……って、あれ?」

もう完全に休憩モードだったのに、ガイドが不穏なリアクションをする。

俺はそれを見なかったことにして、そのまま寝てしまたかった。

当然そうもいかないのは分かっていたが。

「なんだよ、その反応は。再結合は成功したんじゃないのかよ」

「いや、それは成功したんだけど、分裂箇所が不自然でね……」

俺もモニターを覗いて確認してみるが、イマイチよく分からない。

そもそも俺は何が自然か知らないんだが、何がどう不自然なんだ」

「“綺麗に分かれすぎてる”んだよ。自然に破けたら、こうはならない」

そう言われてみると、確かに次元が分かれた箇所は平行に破けている。

いや、これでは破けたというより、まるでハサミで切り取られたみたいだ。

「じゃあ、何か? 誰かが意図的に、次元を分裂させたってか?」

「恐らくね。それでも、ここまで芸術的な分かれ方は……まさか!?

ガイドの素っ頓狂な声が船内に響き渡る。

どうやら心当たりがあるようだ。

「これは……“フラッガー”の仕業だ!」

また妙ちきりん固有名詞が出てきたぞ。

現状でも雰囲気理解しているだけなのに、次から次へと。

これだからSFは面倒なんだ。

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記事への反応 -
  • ≪ 前 「なんで俺が?」 「キミじゃなきゃ次元に直接干渉できないからだよ。厳密には“普遍的存在”じゃなきゃ、だけど」 さも当然のように、また固有名詞を出してきた。 いや確...

    • ≪ 前 レーダーを頼りに信者達の目を掻い潜り、俺たちは慎重に歩を進めていく。 不幸中の幸いというべきか、道中は信者たちの手が及んでいない場所が多く、労せず次元の歪みに辿り...

      • ≪ 前 信者たちは難なく撒くことができた。 彼らのダボダボな白装束は、人を追いかけるのには適していないからな。 こういう時ですら、なりふり構う必要があるんだから信者は大変...

        • ≪ 前 もしかしたら、この世界では普通のことなのだろうか。 価値観が矯正されているから、彼らにとっては問題ではないのかもしれない。 集金が阿漕だとしても、それが“救い”へ...

          • ≪ 前 生活教は“生活をより良くする”という教義のもと、日々ライフハック的なことを広めている。 この辺りを中心に活動しており、地域新聞に載る程度には有名な新興宗教だ。 し...

            • ≪ 前 その地に足を踏み入れた瞬間、すぐに異様な空気感が襲った。 場所は先ほどいた庭と同じ。 目に映る景色も代わり映えしない。 だが「何かが違う」という感覚。 リメイク、リ...

              • ≪ 前 「さっきの続きだが、“本来なら存在しなかった世界”って何だ?」 「分岐によって自然発生的に生まれた世界ではなく、次元の過干渉により発生した世界。システムの不具合、...

                • ≪ 前 ガイドと初めて出会ったのもエイプリルフールだった。 恐らく、こいつの時代にはそういう文化がなく、たまたま巡り合わせが悪かっただけなんだろう。 「これがこうなって、...

                  • 幸せって何だろう。 ……なんてことをシラフで管まく奴がいたら、それは人の温もりに飢えているドランカーか、時間を持て余したバックパッカーのどちらかだ。 それ以外だと、弟み...

                    • あのさ もう何年もここで書いているのは分かるし自己満足なのも分かるんだけれど 圧倒的につまらないんだ 自分用に書いているというのもあると思うけれどまったく面白くもないもの...

                  • ねえ みんな面白くないとか、延々とスパムみたいなつまらないことやめて欲しいって言ってるよ そんなに強情にならないでいい加減やめたほうがいいよ ここらが引き際としていいタイ...

                • いい加減諦めなよ 本当につまらないんだよ 何回も言われてるんだからさ 意固地にならずにここは清々しくやめようよ みんなそう思ってるよ だからやめようよ

      • 何度も言うけどさ 本当につまらないんだよ だからさ もういい加減やめたほうがいいって どうしてそんなに頑固になるの こうやって言ってることを素直に受け止めて

    • ごめん やっぱり面白くないよ 本当に何度もいうんだけれどさ 才能もないし諦めたほうがいい もう投稿しないほうがいいよ

  • ≪ 前 「フラッガー?」 「宇宙規模で有名な指名手配犯さ。SSS+級のね」 「そいつは激レアだな」 そのフラッガーとやらは様々な世界を行き来して、幾度も次元を分裂させているらし...

    • ≪ 前 「なあ、今すぐじゃないとダメなのか? また次回にでも……」 「頼むよ。こんなチャンス、二度とこないかもしれない」 ガイドたちは、今までフラッガーの犯行に悪戦苦闘し...

      • ≪ 前 俺たちはフラッガーを拘束して、次元警察に引き渡すまで船で待機することになった。 「ふふふ……己(おれ)も年貢の納め時が来たというわけか」 信者達が俺たちを捕まえよ...

        • ちゃんとトラバ読んでる? つまらないからもうあきらめようよって 何回も書き込んでいるよう 誰も求めていないことだし 本当にもうやめようよ

        • ≪ 前 「これは使命だと思った。全ての人間、いや森羅万象を幸福にせよという己(おれ)の使命だと」 彼はそのフラグで、悪魔的なヒラメキを得たのである。 それが世界を分裂させ...

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