スメハラ、最初は「お前の香水クセーから辞めろや!」だったり「ジジイがエイトフォー使うんじゃねえよ!」などといった香料の使いすぎに対してのヘイト概念だった。
それがいつの間にか人間が元来持っている体臭そのものへの批判へと変わっていくまでの時間は余りにも早すぎた。
それはまさにマルティン・ニーメラーの法則そのものと言えたわけだ。
誰かが加齢臭を攻撃した時、私はそれに深くうなづき協力した。私はまだ若年層だったから。
誰かがワキガ臭を攻撃した時、私はそれに深くうなづき協力した。私の耳垢はカサカサだったから。
誰かがケトン臭を攻撃した時、私はそれに深くうなづき協力した。私はダイエットをしていないから。
誰かが私に攻撃を始めた時、私は何も出来なかった。私には私の臭いが分からなかったから。
「臭い奴は人類に仇なす犯罪者、言って聞かぬならもはや人権など存在しない」
現代においては、
加齢臭を止めることの出来ない中年は社会に存在するべきでないので死ぬべきであり、
肉体労働者は悪臭が染み付いているから職場と家を往復するだけの奴隷であるべきであり、
オフィスワーカーは発汗能力が壊れた悪臭製造機なので在宅勤務だけをするべきなのであり、
ガキは小便臭いから姿を隠すべきであり、ジジイは真にアンモニア臭いので滅びるべきなのであり、
ありとあらゆる人間が他者と一切の接触を断つべきとされているのだ。
もはや街を堂々と出歩くのは己だけは大丈夫だと信じる厚顔無恥な者共のみ。
コミケに旅立つ引きこもり、プレイスペースのカードゲーマー、山籠りを終えた自衛官、嗅覚など完全に壊れきった恥知らずだけが意気揚々と街をゆく。