2024-06-28

が、その先輩が、6月末には大学から消えてしまった。サークルの誰にもなにも言わずそもそも、あまり自分の話をしない「謎の人」だったので、誰も先輩の連絡先も住んでいたところも知らない。

友情恋愛に飢えた高校時代を終えたそうだ。

 そんな康太さんの話に、私はなんともせつなくなった。私には、康太さんの辛さがよくわかる。誰かに自分の今と未来相談したい。だけど“自分が知らないことが何かを知らないから、何を誰に聞いたらいいのかわからない。

 ”どうすれば、自分の在りたい自分を見つけられるのか、それに近づく努力方法とはどこにあるのか……すべてがわからないのだ。

 「好きにやっていいよと言ってくれた両親。でも、どう生きていいのかわからない。かといって両親に相談するのって、恥ずかしくてできないじゃないですか? 

 根暗自分が嫌でね。何がやりたいかもわからないまま、地元から逃げるように東京私立大学入学しました。学部なんてなんでもよかった。とにかく上京たかったんです。

今度は友達を作ろうとしていたので、最初勧誘されたサークルに入りました。それが、スピリチュアル研究会だったんです」

 占星術血液型占いから遠隔治療まで、いろんなスピリチュアルに興味を持つ人たちが“ごった煮状態”のサークルだった。

 「今考えると、そういうサークルは珍しかたかもしれません。ヘンな宗教っぽさはなかったと思います。僕は、ただ友達がほしくてサークルに入っただけ。

 僕をそのサークルに誘ってくれた1歳年上の男子の先輩が、この石を持ってるといいことが起きるよって、パワーストーンをくれたんです。

 見た目は黒くてゴツゴツしていて、手のひらサイズ公園などで見る石のカタチに近いのですが、はっきりとした黒い色はあまりたことがない気がして、なんだか貴重な石に思えました。

 パワーストーンなんて、僕には未知の世界でしたが、なんか頼るものをやっと見つけた気がしましてね。毎日、もらったのを大事に持ち歩きました。すると、ほんとに結構いいことが起きたんです。クラスで気になっていた女子からおはようって挨拶してもらえたり。なかなか当選しないアイドルライブチケット当選したり。

 サークルでは先輩以外にもみんなと普通にご飯に行けたりと、やっと普通人間関係を築けるようになった。なので僕にとっては、その石をくれた先輩が神様のように見えていったんですよね。

 沖縄出身で黒く焼けているイケメンでね。白くてひょろっとしている自分とは対照的。男としてもかっこいいなあと憧れていたんです。もっと仲良くなっていろんなことを教えてほしいなあと思っていたのですが……」

 が、その先輩が、6月末には大学から消えてしまった。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん