オレオレFCは今季、過去最高の5位に浮上。天皇杯は準優勝に終わったが、飛躍の1年となった。今回「下剋上の1年」と題し、野河田彰信体制初年度で飛躍した要因を3回連載で探る。
昨年まで2年連続17位と不安定な成績に終わったオレオレFC。今年1月に就任した野河田彰信監督は具体的な目標を掲げず「まずはチームをどう上げるか」という慎重な言葉に終始したが、開幕前からロイブル軍団の風当たりは厳しかった。
昨年のエース山本(現英・FCドルジャース)ら主力がオフ、大量に流出した事で、主力と言えるのは、MF鈴木潤主将のみ。特に村上(現白・ノワール)頼みだったGK陣は慌てて望月、野村を獲得。戦力は実戦経験のない若手と新人のみという有り様で、評論家、記者からは「Jワースト記録を次々に樹立する」「断トツ最下位での降格だろ」と辛辣に書くスポーツ紙もあった。
実際、キャンプ、開幕前の練習試合は惨憺たるものだった。鹿児島キャンプでは大分に0ー3で敗れたのを皮切りに、地元のJ3鹿児島にも0ー1で敗れる体たらく。静岡のキャンプでもJ3沼津にこそ引き分けたが、J2磐田には6失点し、清水には11失点無得点という大差で大敗。評論家、記者の言うように「今年で終わり」と誰もが思っていた。
不安を抱えての開幕。案の定3試合未勝利。G大阪との開幕戦は終了間際に追いつき、引き分けるのがやっと。続く湘南戦でも引き分けたが、若さ故のミスが散見。京都戦では早くも黒星を喫した。4試合目の鳥栖戦で初勝利を掴んだが、続く広島戦は黒星。ここまでは「不安定かつ、どうなるか分からないシーズン」の幕開けだった。
潮目が変わったのは3月29日の大分戦。スコアレスドローに終わったが、それ以上にクラブを待ち受けたのは中2日で柏とのアウェイ戦という過密日程。鈴木潤らをフル出場させたため、主力が使えない危機的な状況で、スタメンを大幅に入れ替え、ベンチもユース選手を含めて僅か5人しか登録出来ない惨状。誰もが柏の大勝を予想した試合だった。
しかし野河田監督は慌てていなかった。「今日勝てば、何かが起きるで。今日出てる選手達がレギュラーや」と鼓舞。これに控えメンバーが奮起し、前半終了間際に先制点を奪うと、急造とは思えない試合運びを披露。その後も追加点を奪い、3ー0で圧勝した。
柏サポーターのブーイングが鳴り響く中で、歓喜に湧くロイブルファミリア。野河田監督も「過密日程という状況の中で選手達は良くやってくれた」とねぎらった。そして、この一戦がオレオレFCの今シーズンのターニングポイントとなり、誰もが予想しなかった飛躍への第一歩となった。【(中)に続く】