TRPGをやっている。
システムとかは本筋に関係ないのでは省くが、とにかくTRPGをやっている。
自陣の中にAさんという方がいる。
ご両親に愛されて育ち、この世の理不尽を嘆き、家族と幸せに暮らしている。
彼女は理解力が低く、同じことを時系列順に何度も確認し、自分が話す時も時系列順に話し、さらにすぐに枝葉に話が移るため話にまとまりもない(私も含め他のプレイヤーはだいたい状況を理解しているので、ゲームマスターが悪いわけではない)
彼女はゲームマスターが描写中であろうがお構いなしに喋り続け疑問をぶつけ理不尽な出来事には怒りを示す。
TRPGなのでダイスやシナリオの都合で、多少理不尽な場面はできてしまうがそれでもお構いなしである。
Aさん本人は「ゲームマスターを批判する気はない」と言っていた。
たとえば、長めの描写をする際は効果音とともに『描写中』という表示を出し、「これが出ている間はお静かにお願いします」とAさんにお願いするなどしていた。
Aさんは基本的には良い子なので、言われたらやめる。
一生懸命黙って、『描写中』の表示が終わると決壊したダムの如く喋り出すが、ゲームマスターとしては描写中に喋られるよりよほど良いのだろう。
ゲームマスターの話をしよう。
ゲームマスターのBさんは、よく言えば下町育ちで悪く言えば育ちが悪い。
肉親に褒められたことはなく、理不尽な扱いばかり受け、現在は独り身で心療内科に通っている。
彼は理解力が高く、人の声の機微から感情まで察知し、三人同時に質問しても正確に返答し、話を三行でまとめてくれる。
彼は自己肯定感がまるでなく、特に否定系の語句にものすごく弱い。
たとえばAさんがシナリオに対して「(ダイスの結果とはいえ)どうしてこんな酷いことするんですか!?」などと言えば、彼はひそかに傷つきつつ描写を続ける。
BさんはAさんが気持ちよくTRPGできるように色々工夫をした。
Aさんはシナリオを再開するたびにセッションの頭から現時点までの出来事や情報を何度も何度も確認する。
そのため「13時から始めます」と約束していたセッションが結局14時始まることもザラだった。先に確認しとけよと私は思うが、困ったことにAさんには遅刻癖もあるため、そもそも来るのが13時15分とかだ。
Aさんはその確認作業に対して罪悪感を覚えておらず、Bさんは時間通りに始められない自分の不甲斐なさを嘆いた。
そこでBさんは再開前にあらかじめ『ここまでのあらすじ』を三行でまとめ、それを開示することでAさんの確認作業を省くことにした。
けれど、AさんのことでBさんが心をすり減らしたりしているのはもう見たくないし、正直遅刻癖のある人とTRPGをやるのはしんどい。
Bさんは優しいからAさんを邪険に扱ったりはしないだろうし、忙しい方なので自陣以外とは卓を囲めないと言っていた。