以前は、ワザと取材対象の逆鱗に触れるような質問をして怒らせて口を滑らせることを、取材対象の本音を引き出すための高等な取材テクニックと称して、誰よりもマスメディア関係者自身がそれを正当化していたように私は記憶している。
それが今回、高額賞金を争ってプレーしている著名なテニスプレイヤーが「うつ病」をカミングアウトした途端、いかにも「取材対象に精神的な負担を与えるようなマスメディアの質問のやり方には、問題が有ると自分も思っていた」と言わんばかりに「取材対象のメンタルヘルスを守れ」の大合唱が始まった。この有り様は、私の目には、とても滑稽に映る。
それでは今後、彼らマスメディアは、取材対象のメンタルヘルスを本気で守るだろうか?私の予想は悲観的、つまりNOである。
今回のテニスプレイヤーに関して「取材対象のメンタルヘルスを守れ」と言われているのは、マスメディアにとってのスポーツの中継や報道が、金銭的な利益のタネだから、また、マスメディアの大半が肩入れしている政治的ムーブメントにおいて、彼女がスポークスマンの一人になっているからという理由に過ぎない。要約すれば、オトモダチだから忖度しているということである。
金も地位も無い、マスメディアとのコネも無い人間に対しては、これからも変わることなく、メンタルヘルスを無視した取材手法を用いることだろう。これらに該当する人間は、マスメディアのオトモダチではないからである。
一例を挙げる。米国ナイキ社が関与した陸上選手を育成するプロジェクトにおいて、育成対象に選ばれた女性陸上選手に対して、彼女の人権や尊厳を踏みにじる行為をコーチ陣が行っていたことが、つい最近になって被害者自身の口から告発された。それらの被害は、わずか数年前の出来事である。
今、あのテニスプレイヤーの彼女のメンタルヘルスを思いやる発言をしている慈悲深いマスメディア関係者が、この女性陸上選手を取材して問題提起するかと言えば、十中八九しないことだろう。
何故ならば、彼女は無名の選手であり、また、大企業であるナイキから広告料として支払われる小さくない金を、マスメディアも失いたくはないからである。
テニスプレイヤーの彼女のカミングアウトも、それを支持するナイキも、我々一般人をエンパワーしてはくれない。それどころか「結局、金や地位やコネを持つ人間だけが得をする」という無力感を抱かせるだけだろう。
激怒した場合、相手を褒めちぎるのが当たり前の業界 ↓ 相手の欠点を言う=相手反省=相手の利益になる 相手の悪いところを褒める=相手の失敗確率が上がる
だから、僕の欠点を言って とかめちゃくちゃ嫌がられるよ それは有料
それに、何を言って、何を言わないかをコントロールする業界だから 感情的になって情報を言うとか期待しない 普通に金払う