本当にしたいのは相続だ。
パートナーとは法律婚せず、事実婚をしている。お互いに結婚願望は少なかったが、付き合って随分と経つので若い頃には何度か結婚の話も出た。
自分は姓を変えるのがかなり嫌だったし、育ってきた家庭環境も微妙だったので結婚に対しては余計に消極的だった。パートナーも姓を変えたくなかったそうで、「じゃあ結婚はいいや。結婚しなくても一緒にいられる」という結論になった。お互いに子どもも欲しくないし、親族とも疎遠である。面倒がない。
でも家を買った。ローンはまだまだ残っているが、預金もそこそこ貯まっている。すべて自分名義だ。がんばって働いて手に入れたものだ。自分が死んだらすべてパートナーに相続して欲しい。一緒に暮らしているのだからその権利がある。ふたりで決めて築いてきた財産だ。親兄弟親戚には決して渡したくはない。
ライフステージが変わって、また結婚について話す必要がでてきた。相手が姓を変えても良いよと言ってくれれば、ジャンケンでもして改姓する方を決めればいいかとこっそり思っていた。
話し合ってみたら、相手は姓を変えてもいいと思うようになったらしい。転職などのタイミングであれば改姓してもいいらしい。パートナーは昔ほど改姓に抵抗がなくなってきたようだ。われわれの所得の差がひらいてきたのも一因らしい。
しかしなんと、それを聞いた自分は「そうかあ、じゃあ結婚するか!」とは思えなかった。パートナーの姓も自分の姓も大切なのだと改めて思った。なにがジャンケンで決める、だ。そんなんで決めてたまるか。
とは言え金の絡む話だ。相続がスムーズに済むなら改姓してもいいというパートナーの気持ちを無視するわけにはいかない。
話し合って事実婚のまま保留になった。
姓を変えてもいいが、積極的に変えたいわけではないそうだ。そらそうだろう。
死ぬ少し前に法律婚してしまう手もある。死ぬのにそんな猶予があるとは思えないが。(と言うかいざ死ぬ段になったら面会できないとかの問題も出てくるんだろうな。)
くそ、保留だ保留。
そして、選択的夫婦別姓の話題が世の中を賑わせている。注目しているニュースでもある。
でも改正前の姓を名乗れるだけだ。旧姓ってなんだ。併記ってなんだ。戸籍法はクソか。
同性パートナーたちはこの世の中をどう思っているのだろう。養子縁組している人たちは改姓に抵抗はなかったのかな。それ以前の問題なのかな。
姓ってなんなんだ。
姓なんかに振り回されたくないのに、それでもやっぱり変えたくない。馴染みすぎているのだ。何十年もその名前で生きてきた。誰のものにもなりたくない。誰かを自分のものにもしたくない。改姓はそういう気持ちを侵害してくる。名乗れるだけでは、併記できるだけでは足りない。
ずいぶんわがままだな
どこがだ
結婚したい。うそ、そんなにしたくない。 本当にしたいのは相続だ。 パートナーとは法律婚せず、事実婚をしている。お互いに結婚願望は少なかったが、付き合って随分と経つので若...