いつものジャンプに「BAD SHIELD UNITED」が載ったのは1997年のことで、これが久保帯人(宣章)との出会いだった。
感想としては「こんな漫画が読みたかったんだよ!!」しかなく、小学生の自分はチラシの裏に何度も何度もその漫画のファンアートを繰り出していた。
初めてアンケートを出し、この漫画をもっと読みたい旨を書いて編集部に送った。
それから長いこと待った甲斐があり、1999年という世紀末の記念すべき暦にゾンビパウダーの連載が始まる。
絵柄ですぐにあの読み切りの人だ!とわかった。やはり世間もこの才能に気づいていたか…と嬉しくなり、今1番かっこいい漫画として学校の机に「ZOMBIEPOWDER.」と彫り込むなどして愛した。
しかしあっという間に掲載順は後ろになっていき、全4巻の短命に終わってしまった。
この時はとても悔しかった。もうこの人の漫画は読めないのかもしれないと思った。
だがそれは杞憂に過ぎず、2001年、こんにち誰もが知る漫画「BLEACH」の連載が始まった。やはり初回から面白かったしキャラは魅力的で、どうしようもなく自分好みだった。
ただ、また打ち切りになることが怖かった。
そのためアンケートをなるべく書くようにし、今度こそ失わないために努力しようと思った。
コンのマスコット全員プレゼントの告知が出た時は本当に感動した。グッズが手に入るなんて夢のようだった。
即注文し届いた後は学生カバンに付け、登下校の間も今1番面白い漫画をアピールした。
それからの時間の流れは速く、瞬く間にBLEACHはブレイクした。
アニメ化、師匠のサイト、KBTIT(淫夢)など色々あったがすっかり「久保帯人」は世の中に広く行き渡った。
心配せずとも元からこの才能は誰にも止められるものではなかったのだ。
長い年月が過ぎ、BLEACHは終わった。積み上げたものの大きさを踏まえたらしばらく漫画は描かないかもしれないし、今後どんなものを読みたいか読者としてもわからなくなっていた。
あんなにファンだった久保帯人の漫画。もっと読みたいという気持ちは充分満たされていた。
約20年の間に自分もすっかり大人になっており、漫画を読むこと自体疎遠になっていった。
そして、久保帯人は帰ってきた。
Twitterで「それ」を知り、え!久保帯人の新作出てたんだ!とワクワクして該当サイトへ読みに行った。
つい先日ジャンプ作家が性犯罪で逮捕されたばかりというタイミングで性犯罪の漫画を描いていた。
かつて憧れた「どこを見てもとにかくかっこいい漫画、かっこいいキャラ」はなく、そこには腐った久保帯人の死体が横たわっていた。
当然ながらすぐに大きな批判を受けており、社会的にも久保帯人は終わりましたとハンコを押されているような気分で意見1つ1つを読んでいる。
加齢で古くなったりダサくなるのは当たり前だ。
でもその当たり前を乗り越えられる人が1番かっこいいし、久保帯人ならそれができると信じていた。
ずっとかっこいい漫画をかっこよく描き、大人も憧れるようなキャラクターや誦じたくなる台詞回しをクリエイトし続けてくれると思っていた。
今の久保帯人が1番読み返すべきは「BAD SHIELD UNITED」だと思う。
踏みにじる側になってしまったことを悔い、反省し、かっこいい漫画とは何なのか、今一度向き合ってほしい。