「これが……?」
最近になって設置されたから小奇麗で、歴史なんてものも感じない。
「見た目で判断しちゃいけない。これには深~いオモムキってやつがあるんだから」
文化的だったり芸術的なものってのは、一般人には基本的に理解できない。
「はあ?」
「はあ?」
ふざけているわけじゃくて、大真面目だ。
それでも俺たちの心に刻み込み、語り継ぎたい“意味”があるんだ。
いや、そもそも車なんて滅多に通らないので、それすら必要ないかもしれない。
「じゃあ、なんでここに信号機が設置されたのか」
そう、そこが重要なんだ。
発端は今から数ヶ月前。
その日の俺もいつも通り登校して、いつも通りクラスの仲間たちと何気ない会話を交わしていた。
だけど一つだけ違っていたのは、ツクヒの憎まれ口が聞こえてこなかったってこと。
「ツクヒまだ来てないのか」
近所に店があるんだけど、入ったことがないし、入る気もないところってあるだろ?
通りがかった時、その店が開いてなかったら「あれ?」ってなるじゃん。
そんな感じさ。
「私も気になってたんだけど、また手強い風邪にでもやられたのかしら」
「ぶり返したのか? 完全に治ったとか言ってたのに」
ズル休みなんてのもしない。
そんなことをする位なら、無理にでも登校して「ああ~学校行きたくねえ~」ってグチグチ言ってくる奴だ。
だから、HRも迫ってるのにあいつがいないってのは、思っている以上に特殊な状況だった。
俺の住む町は田舎ってわけじゃないけれど、控えめに言ってマイナー、はっきり言えば中途半端なところだ。 それでも年に1回くらいのペースで、ガイドブックの流れに逆らって上陸し...
≪ 前 結局、HRの時間になってもツクヒは現れない。 そして、その理由はすぐに分かった。 「先ほどツクヒ君のご両親から連絡がありまして……登校中に車に轢かれたようです」 突如...
≪ 前 信号機の管理には、警察が大きく関係しているらしい。 「ん? 信号機の設置ですか」 「ええ、交通事故が最近あったでしょう。そこに設置しようってことで」 「ああ、あれ...
≪ 前 こうして俺たちは、この言い知れない謎を解明するため捜査に乗り出した。 ツクヒを轢いた犯人はどこの誰なのか。 いや、本当に車に轢かれて怪我をしたのか。 そうじゃなか...
≪ 前 「ごめんくださーい」 俺たちは見舞でツクヒの自宅を訪ねた。 勿論それは建前で、本当の目的は事情聴取。 第一発見者なら、ツクヒを轢いた車を見ている可能性も高いだろう...
≪ 前 「……君ら、本当にツクヒの見舞いで来たのかい?」 さっきまで穏やかだった二人も、さすがに表情を強張らせている。 まあ無理もない。 指摘自体は間違ってなくても、友達...
≪ 前 「あの二人、すごい剣幕だったね。最初の穏やかさが嘘のようだ」 「ああいうところは、やっぱりツクヒの親なんだなあ」 ただ、あの態度は少し気になる。 子を思うあまり感...
≪ 前 前置き通り、語られた真実はシンプルだった。 あの日、目覚まし時計が鳴らなかったせいでツクヒは寝坊してしまう。 「は? 何で鳴らないんだ? いや、鳴っていたのに起き...