お世話係の朝は着替えから始まる。
まずはおむつチェックだ。便尿失禁があれば体を洗ってからおむつを交換する。
交換中に便が出てくることもしばしばだが、それは健康(?)な証拠だ。
ウィルスと菌の複合感染と噂されているこの病気は大脳の細胞が徐々に死んでいき、次に心臓が停止する。しかし、体は動くのである。
治療法はないが、皮膚を防腐処理すると生存期間が伸びることはわかっている。
まだ、法的に生きているとも死んでいるとも決着がつかない状況の中でこのお世話係の仕事が生まれた。、
ちなみに4週8休、月給20万円、夜勤有りである。2週間の研修を受けると実務ができる。
お皿をひっくり返したり、吐いたり吹いたりは平和な日常である。
気に食わないときは引っ掻いたり噛みついたりしてくる。
新鮮な生肉を食事に出すという実験をしたものがいたがどのゾンビも食べなかったので、
人間を食料だと思ってかじりつくのではないらしい。
武術の達人のように受け流すことが求められる。
月に一回病院で検診を受ける。
専門の病院で暮らしている場合もあるが、施設から送迎バスで移動することもある。ちなみに施設は街から離れた辺鄙な場所にある。
街から近いほうがなにかと便利なのだが住民の反対運動が実を結び、電車で通えば一時間の場所に作られるのである。
検診といっても治療法も原因もわかっていないので、動いているかの確認と防腐剤の軟膏を塗るついでに皮膚が腐ってないか見て終わりである
どうにかして動かさないと、万年床の床が腐っていくように皮膚も筋肉も腐っていく。
関節も動かなくなり。着替えをさせようと腕を動かすと骨が折れたりする。
使命感に燃えた元小学校校長の自主的な活動がスタンダードになったらしいが、本当のところは誰も知らない。