いや待て、そもそも俺はトラバのトラバ元のトラバ元のトラバを書いていないし書いた覚えがない。俺はトラバ元の文章を読んで不意に、きまぐれに「もし自分の頭がおかしいのだとしたら、おれは自分の頭がおかしいことをどのように認知すればいいのか」と思って、あのトラバあてにトラバを書いただけだ。つまり、俺が書いたトラバのトラバ元のトラバ元を見返し、「このトラバ元のトラバ元を書いたやつは頭がおかしい」と考えたとしても、それはトラバ元のトラバ元になりすましてトラバを書いた俺が頭がおかしいことの証明には成りえんのだ。
しかし、俺がトラバのトラバ元のトラバ元のトラバを書いていない、すなわちトラバのトラバ元のトラバ元のトラバの書き手が別人であるということは、はてな匿名ダイアリーにおけるビッグブラザーたるはてな以外には知りえないし証明し得ないから、俺のトラバのトラバ元のトラバ元のトラバのトラバのトラバを書いた俺がトラバのトラバ元のトラバ元のトラバを書いた人間と同一人物であるとしか見なしようがない状態にあるわけだ。
するとだ。もし俺の頭がおかしくないのだとすれば、俺が説明材料としようとしていたこと……俺の頭がおかしい可能性についてみずから言及し、少なくとも俺は俺の頭がおかしい可能性について考察出来る程度の一定の論理性をその身に有していることになるし、俺は「俺は頭がおかしい可能性を有しているが、頭がおかしい可能性を有しているという事実を自ら導き出し、俺自身の意思によってそれを承認出来る程度には、頭がおかしくなっていない」と言えるかもしれない、という状況が、根本的に変質してきてしまうんだ。
俺は俺が書いたトラバのトラバ元のトラバ元および俺が書いたトラバのトラバ元の会話上に、言うなれば「“トラバ元のトラバ元”と“トラバ元”という2つの人格しか通常認め得ない領域」に入ってしまったがために、意図せず俺は俺の人格としての固有性の一切が認識されない空間の内部へと、割り込んでしまった――俺が俺としての人格を承認されない空間に割り込んでしまったのだ。さらに言えば、それがために、俺は自ら“俺固有の理性”というものを放棄してしまったのだ。そして、俺が“俺固有の理性”を放棄してしまったがために、俺が考える「俺の頭がおかしくないことの説明」は一切の意味を持たなくなってしまった。それは仮に「俺は頭がおかしくなっていない」という絶対的な事実を俺が有していたとしても、“俺固有の理性”が承認されない空間では、「自分のことを自分ではないと言っている頭のおかしいやつ」にしかならないし、“トラバ元のトラバ元”と“トラバ元のトラバ元のトラバのトラバを書いた俺”とがそれぞれ別個の人格を持った人間であるという認識を他者に強いたところでそれは証明し得ない事象に対する「自分はこのように感じられるからそういうことにする」という相対主義的理屈……「私はあれがシカクに見えるが、お前があれはマルであるというのならマルであるということにしてもいいし、そういう解釈をすることもできる」という話にしかならない、ということだ。だから、“俺固有の理性”のゆらぎが収束することはなく、どちらにしても「俺が頭がおかしくないことの説明」は何の意味もなさないわけだ。
しかしながら、ここまで考えたところでなんだか俺はよくわからなくなってきた。俺がトラバ元のトラバ元とトラバ元の二人格しか承認し得ない空間に割り込んで俺固有の理性を放棄してしまったところまではいい。しかし、俺が俺が書いたと認識している今俺がトラバを書いているトラバのトラバ元にお前がトラバを返したということは、つまり俺は“俺固有の理性”をお前に知覚されたこと、承認されたことにほかならないのではないか?
だとするならば、今俺がトラバを書いているトラバを書いたお前に「お前は頭がおかしい」という返信を俺が送られたのならばだ。お前が俺のトラバに対して送ったその文言が持つ意味に反して、「“俺固有の理性”の復活」を意味するのではないのか? ――だって、“俺固有の理性”を喪失させた今俺が書いているトラバ元のトラバ元のトラバ元のトラバ元の人間は、このトラバを受け取っていないわけなんだから、トラバ元のトラバ元のトラバ元のトラバ元の人物と、このトラバとこのトラバのトラバ元のトラバ元を書いた俺という人格は、俺の現状の認知上でははっきりと区別できる状態になっている。俺が有している「俺自身の認知への疑義とその疑義の承認」が意味を持つことになるのではないか?
まったく、頭がこんがらがってきた。そもそも今俺が書いているトラバのトラバ元のお前は誰だ? そもそもお前こそ、お前が確かな認知の上に事物を適格に知覚し遠隔的に今俺が書いているトラバのトラバ元のトラバ元のトラバ元のトラバ元のやつとトラバ元のトラバ元のトラバ元のやつそしてトラバ元のトラバ元たる俺という複数の人格が並びたつトラバに参画し発覚している事実をもとに正確に論駁しているのだといった顔をした不明確な人間――あるいは新たな“自分固有の理性”の喪失者ではないのか? お前は自らの手で喪失していた俺固有の理性を復活させたしまたそのことでこれまで前提となっていた諸条件をほとんどまったく打ち壊してしまったのだ。お前がトラバを送ったことでお前が踏まえていた諸トラバの均衡がまったく崩れてしまったのだ。そしてそうなった現在の時点におけるお前のトラバは全く意味を成さないし承認に値しない。俺はお前が俺に付けたトラバを退けるぞ。俺がお前の意見を承認するのは、お前がお前が崩した諸トラバの諸条件をお前の理でもって再び正してからだ。さあ、お前の番だ
「常人はメタメッセージとメッセージの区別がつくので自分の発言を吟味するところから始めるがそれをせずメッセージのみだけに執着して考え込んでいる時点でお察し」という指摘を...