「角川組のシマでシノギやるいうちゃら親分に話通すのが筋じゃろ。それがこの業界の仁義ちゅうもんじゃ」
角川組の代理が八百万組から来た若い者に切り出す。八百万組というと何やら大きな組に聞こえるが角川組からみればシノギの現場に出る小さな組の一つに過ぎない。ただ、最近になって八百万組のケツ持ちが現れてからは威勢だけはいい。
「角川組だけじゃないぞ、このシノギには他の組も絡んじょるけえの」
「わこうちょります、親父達全員に話通せいうのはわこうちょります」
下手に出たと思ったが、そんなに物分りがいい相手ではない。脅すかのように続ける。
「じゃがの、それじゃあ遅いんじゃ。こっちは監督、脚本、演出、構成、コンテ、さらに声優も抱えとりますけえの、遊ばせとくわけにもいかんじゃろ。働いてもらわにゃいかんのじゃ。けものシノギは今が稼ぎ時じゃけぇの、それにはスピードが大切じゃ。たつきも早くやりたいいいちょります」
たつきとは八百万組の構成員で、期待されていなかったけものシノギで孤軍奮闘、大きな山に仕上げた立役者だ。けものシノギのことなどすっかり諦めて忘れていた組長連中はもう一山当てるために次の策を巡らせていたところに、独断で動き出した八百万組に釘を刺したのが角川組だ。
「ほいじゃけど、何か間違って親分たちの顔に泥塗ることもあるかもしれん。そん時はこのシノギが潰れるじゃろ、たつきのタマ一つじゃ収まらんぞ、組がなくなるかもしれん。そうならんように、話通せいうとんじゃ!動物ファースト忘れちょうたんか!」
角川組としてはけものシノギを長く大きく稼げるものにするために時間をかけて育てたいと考えているのだろう、慌てる乞食は貰いが少ない、という考えだ。一方で八百万組は今の勢いを利用しない手はないと考えているのだろう。
「このシノギは八百万組が支えてますけえの、かの角川組いうても我々が手を引いたらどうなるかわかるじゃろ。もう少しだけでええんじゃ、自由にやらせてくれんじゃろうか?」
けものシノギから八百万組が手を引いては育てるも何もない、シノギが一気に萎んでしまうのは明らかだが角川組にも他の組に対する仁義がある。
「親分達に話通せないちゅうなら任せるものも任せられんちゅう話じゃ。まして、他の組まで巻き込むんならそれぞれの組の面子も親分の面子にもかかわるけえの。組の面子潰せば戦争じゃぞ、けものシノギのために戦争やろういうつもりか!」
角川組代理者の形相に怯んだわけではない。その証拠に八百万組の代理者は顔色一つ変えずに答える。
「ほいたらもうええんじゃ、このシノギから八百万組は降ろさせてもらいます」
けものシノギの根本を支える八百万組としてはやけに物分りよく、あっさりと手を引いた。
「たつき、ぶちかましたれ」
「けものシノギから外れることになりました。角川組の意向じゃと聞いちょります」送信。
「角川組にみかじめ料なんて払ってられん、今月で止めじゃ!」
「すぐに追い出す角川組なんて時代遅れなんじゃ!」
けもフレを一人で支えシノギを成立させた、たつきの侠気にあてられたフレンズ達は一斉に角川組への反発を露わにした。もちろん、この反発には日頃からの角川組に対する不満もあったはずだ。
その声は角川組の親分、カワンゴの耳にも一晩足らずで届く。
「ぎゃあぎゃあわめいちょるのはよ黙らせんか!他のシノギに影響するじゃろうが!」
しかし、既に角川組の影響が出ていた。
広島弁は全くわかりません。もちろん事の真相も知りません。許してつかあさい。仁義なきキリスト教史を読んでいたところだったので書いてしまいました。