今回は少年ジャンプ+
そもそも「漫画の面白さ」ってのが抽象的なテーマなので、作中で説得力のある説明をどのように表現するか。
かつ本作の内容自体をエンターテイメントとして良質なものに昇華させなきゃいけない。
といったことを踏まえて今回の感想を書くなら、その課題はクリアできていると感じた。
展開される理屈は「分かってる感」のくすぐり方が丁度良いと感じたし、絵もテーマに合わせて演出をきかせることで飽きさせないようにしている。
投球による駆け引きと、野球漫画のテーマ選びについてちゃんとこじつけているしね。
こじつけっていい方はアレかもしれないけれども、漫画とかではそのこじつけは結構大事。
明らかに自覚的であろう不自然なプロット、それを前提にしたギャグ。
一応、のっぴきならない状況に対して説明はあるんだけれども、その上で「いや、おかしいだろ!」ってツッコませる感じ。
ジャンプ+には他にもエロコメがあるけれども、本作はよりバカバカしい方向に振り切っているね。
客観的にみれば、あの事件は誰が悪いだとかそういう話ではない。
それがかえって罪悪感を募らせ、たらればを考えずにはいられない。
トーマの涙は試合結果に対する諸々もあるだろうけれども、太一に業を背負わせてしまった申し訳なさとかもあるんだろうかね。
創作におけるアイデアは随分と前から出尽くしていて、後はその組み合わせや、それらをどう表現するかが大事ってのはよく言われるけれども、こういうのを読んでいると改めてそう感じるね。
「中小企業のドラマ」という、別の媒体ではちょくちょく見られるものをテーマに、ファンタジー要素を突っ込んで漫画にしたっていうのが惹かれる。
ファンタジー要素がくっついてはいるけれども、あくまで価値観は現実に則っていて、茶化したりもせず大真面目に話を描いているのが良い。