ブログもやっており、古今東西さまざまなものをレビューしている。
「マスダ、読んでみてくれないか」
オサカは俺に読んで欲しいようだが、そこまで気乗りはしなかった。
俺は映画を観ること自体は割と好きではあるが、正直なところレビューだとか他人の評価にはさして興味が湧かない性質なのだ。
とはいえ試写会のチケットを手に入れたのはオサカだし、その分の借りは返してもいいかもしれない。
観客は如何にも映画を普段観ない層ばかりで、いわゆる“淑女”っていうかね(反感を買いたくもないので、大分ボカした表現にしている)。
それでも驚きだったのが、老若男女もそれなりにいたことだ。
試写会には、割と節操のない映画フリークや評論家が潜り込むことが多いと聞いたが、まさか本当だとは思わなかった。
また、その友達が人数合わせに連れてきた人もいたのだが、映画の概要も情報も調べずに来たとか言うのだ。
最初は事前情報なしで、フラットで新鮮な気持ちで観たいタイプかと思ったんだが、そういうわけではなくて、どうやら主演俳優目当てらしい。
いや、それ自体は驚きはしない。
好みの俳優が出ていることが、観ることの理由の一つになるケースがあることは理解している。
他の観客にもそういう人はいるのだろう。
作っている側や広告側とかだって、そこを推し出しているケースは少なくないわけだから当然ではある。
だが、それ「だけ」を目当てにして、わざわざ2時間弱も席に座っていることを臨むというタイプを目の当たりにしたのは始めてだったもので、思わずここに書かずにはいられなかったのだ。
実績も実力も微妙な人を主演に置くやり方が減らない理由、その極端な例を目の当たりして納得せざるを得なかったというか(この映画の俳優たちがそうだとは言っていないので誤解なきよう)。
いっておくが、別にこの映画が嫌いだからこんなことを書くわけではない。
自分は評価と売り上げは反映させるべきと思っている人間なので、本当に心から嫌いな映画はレビューもしなければ観にも行かないし、出来る限り話題にすら出さないようにしている。
なのでその段階をクリアしている時点で、自分はこの映画に対してそこまで悪印象は抱いていないことは明らかにしておく。
まだ読んでいる途中だが、気になる点があったためオサカに尋ねずにはいられなかった。
「なあ、カジマが観たいと言っていたので連れてきたんだが、やはりマズかったか?」
「いやいや、そんなことはない。自分と違う世界圏を知るのに、丁度いいサンプルになってくれた」
「そうか。『マッピー最高』、『カッコいい』くらいしか言わないカジマを、オサカがすごい剣幕で見ていたから。映画よりそっちにハラハラしていた」
「ああ、そうなのか。自覚はなかったが、それはすまないことをした。まあ、そこまで重要なことじゃないから気にせず続きを読んでくれ」
オサカの今の様子から察するに本当に気にしてはいないようだが、どうにも釈然としなかった。
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