さて、俺が参加した理由はもう一つあり、それは勝算の高さだ。
この『ライト・クイズ』という番組、始まってから間もないことや所詮ローカル番組ということもあって、出場選手のレベルがあまり高くない。
テレビに映れれば儲けもん位のミーハーな人間がほとんどだからな。
だからこそ俺は狙い目だと感じて、あらかじめルールの把握や対策、準備をしっかりとしてきたのだ。
それはこちらも同じだ。
油断もしないし手心も加えない。
「先攻、オサカさん。問題をどうぞ」
こいつが出してくるなら映像作品に関するものだと思うが、どんな風に出してくるつもりだろうか。
「ドラマ『ランニングデッド』で、ゾンビ役のエキストラが水を飲んでしまっているシーンがあります。そのシーンは何話?」
オサカは自信満々に出題するも、会場はざわついていた。
オサカは他人の話より自分が何を話すかばかりに頭を使うタイプのオタクだが、まさかここまでとはな。
「そ、それではマスダさん。解答をどうぞ」
司会者の声に続くように、キィーンと珍妙な音が会場に響きわたる。
そして俺はすぐさま答える。
「1話」
「さて、いかがでしょう、オサカさん」
「……正解です」
オサカはなぜか満足気だが、どうもこのライト・クイズの趣旨をあまり理解できていないようだ。
そりゃあ、オサカにとっては簡単だ。
そしてオサカの話をよく聞かされる俺にとっても。
「さて、簡単度の集計結果が出ました……やはりゼロです! マスダさんの持ち点はほぼ減りませんでした」
自分や自分の周りにとっては今さらなことであっても、他の誰かにとっては新たな知見かもしれないということは往々にしてあることだ。
オサカの失態は大きく、それを取り戻すことは不可能に近かった。
彼が番組の趣旨と自分の趣味を理解していないおかげで、俺は難なく2回戦に進出することができたのであった。
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