「それでは後攻、マスダさん。問題をどうぞ」
あらかじめ出そうと思っていたものを取りやめ、俺は急遽テキトーな問題を出すことにした。
我ながら雑な出題である。
No.1を謳う映画なんて、解釈次第ではいくつも候補があるからだ。
だが、その中でも巷で最も話題になった映画ならば、自ずと選択肢は絞られる。
簡単度はほどほどには行くだろうし、タイナイは間違えるか解答に時間がかかる可能性が高い。
「え~と、『オ・ド・ラント』?」
「マスダさん、いかがですか?」
「そうだなあ、じゃあ不正解で」
「『じゃあ』ってなに!?」
「あ、正解は『複雑な社会問題の詰め合わせ。ノンフィクションに基づく我が半生』ね」
遊びの域を出ないが、このライト・クイズにはこういった戦術もある。
出題者の裁量で、割とアバウトな正解でも構わないのだ。
当然、そんなことをすれば観客や審査員に支持されず簡単度は下がるので、基本的にはやらないほうがいいのだが。
「解答までにかかった時間5秒。不正解ペナルティ。そして簡単度は40。計75点のマイナスとなります」
それでも、タイナイよりはマシな点数にできるわけだ。
それに、あまりにも良質な問題を出すと次の相手の番や、更には他の対戦者たちも真似してくる可能性がある。
あえて雑な問題を出し、手の内を見せすぎないことも戦術なのだ。
まあ、試合前のタイナイの不敵な笑みが癪だったので、ちょっとした意趣返しもあるが。
だが、俺は最初のリードを奪えないことを思い知らせるため、タイナイを真似るように同じレベルの問題を出してみせる。
後攻はこういった風に傾向を探れるし、先攻有利を防ぐために持ち点も高めに設定されているから、俺からすればむしろ好都合だったりする。
こうして数週するとタイナイの持ち点が先に尽き、俺の勝利となった。
「デス・ゲーム、ギャンブルものの主人公みたいにはいかないか……」
タイナイが悔しそうにそう呟く。
そういうのは機転と運に恵まれていることは勿論、ルールをちゃんと把握しているからこそ出来ることだろう。
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