2回戦。
またも知り合いで、この番組の規模の小ささに他人事ながら不安になる。
「マスダ、生憎だが僕には勝てないよ。このゲームの必勝法に気づいたからね」
タイナイは相対すると俺にそう言い放つ。
どうやら何か秘策があるようだ。
だが、それを2回戦で、しかも対戦相手にわざわざ言うメリットがあるのだろうか。
「それではマスダさん。解答をどうぞ」
会場がざわつく。
タイナイはそれでも得意気といった様子だ。
俺はなるほどと思いつつも、緩む頬を手で覆い隠す。
考えれば分かる問題だが俺はそんな気はさらさらなく、解答タイムが始まるとすぐさまデタラメな解答をする。
このゲームにおいて、分からない問題を解くことに時間を割くほどリスキーなことはないからだ。
「分かりません」
「残念、不正解!」
タイナイの戦法は読めた。
つまり簡単度による減点は捨てて、難しい問題を出すことで不正解のペナルティを狙ったのだ。
仮に答えられるにしても、考える時間がかかるものにすることで減点を大きくできるというわけだ。
タイナイはどうだと言わんばかりに、俺に不敵な笑みを浮かべる。
どうやら、これがタイナイの秘策だったらしい。
「解答までにかかった時間1秒。不正解ペナルティ。そして簡単度は5で、計40点のマイナスとなります」
「……え、減点それだけ?」
解答による減点はペナルティを加味しても、簡単度より低めに設定されている。
今回の俺のように不正解覚悟ですぐさま答えれば、このとおり減点は大したことない。
つまり難しい問題を出して不正解を狙うというタイナイの戦法は悪手なのだ。
まあ、このゲームのコンセプトは「簡単な問題を出し合うこと」であるのだから当然の話だが。
ルールをちゃんと把握していれば、タイナイのような発想は絶対にしない。
裏をかきたければ、表が何かってことをちゃんと知っておかなければならないのだ。
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